速くて静粛。320dを新型3シリーズのベストと考えるワケ

BMW320d・xドライブMスポーツ 試乗記

IMG_1485.JPGBMW320d・xドライブMスポーツ 価格:8SAT 629万円 新型320dは標準仕様(578万円)とMスポーツの2グレード構成 駆動方式は全車4WD(xドライブ) Mスポーツは専用スポーツサス/Mエアロパッケージ/18インチタイヤ標準

ラインアップ充実。待望のディーゼル新登場

 およそ7年ぶりにフルチェンジした新型BMW3シリーズのラインアップが充実中だ。新型は2019年3月、2リッターのターボ付き4気筒ガソリンを搭載した後輪駆動モデル(320i&330i)から販売をスタート。5月末には、待望の2リッター・ディーゼル+ 4WD仕様(320d・xドライブ)、さらに2リッターガソリンとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(330e)と3リッターの6気筒ターボ付きガソリン(M340i・xドライブ)を追加した。秋にはワゴンボディのツーリングの登場が控えている。

 今回の試乗車、320d・xドライブは、標準仕様とMスポーツの2グレード構成。日本仕様は、xドライブのサブネームからもわかるように、駆動方式は4WD。現在のところコンベンショナルな後輪駆動は未設定だ。

 パワーユニットは、BMWが「次世代の4気筒ディーゼル」とうたう新開発エンジン。このタイミングでデビューしただけに、実走行による新たなテストモード(RDE)をはじめ、最新の排出ガス規制に対応したクリーンディーゼルである。

 2リッターの排気量が生み出す190psの最高出力と400Nmの最大トルクは、旧型の320dと同値。従来型のシングルターボ式に対して、新型は、新たにプライマリー側に可変ジオメトリー式の2ステージ・ツインターボシステムを採用する。にもかかわらず、出力データが向上していないのは、「厳しさを増した排出ガス処理による影響」と受け取れる。

IMG_1421.JPG外観上ディーゼルを示すのはエンブレムのみ 新型は全長×全幅×全高4715×1825×1430mm 旧型と比較して全長は70mm拡大 全幅は25mmワイド

気持ちのいいパワーの伸び。前後重量配分50対50

 新しい心臓に火を入れ、スタート。まず感心したのは優れた静粛性だった。旧型は、日常シーンで「やかましい」と感じるほどではないが、ガソリンエンジンとの音質の違いは明らかだった。常用域からは外れるが、3500rpm付近から上は「ややノイジー」と思えた。対して新型は車内でも車外でも、明らかに静粛性が高まった。アイドリングストップからの再始動も滑らかだ。

 パワーは十分。1500rpm付近からのトルクの盛り上がり感が顕著で、わずかなアクセル踏み込みに対して背中をグンと押される感覚は、最新の出来のいいディーゼルエンジンならでは、だ。エンジン回転の上昇に伴うパワーの伸び感も気持ちいい。新型ディーゼルは、4500rpmオーバーまで頭打ち感を示さない。「さすがはツインターボの威力」と実感した。タコメーター上に引かれたレッドラインが5400rpmと高かった旧型は、4000rpm付近から頭打ち感が明確だった。なお、新型のレッドラインは5000rpmと、旧型より低く設定されている

 車重は1680kg。旧型320d比で100kg以上のプラスとなった。これは、「走行中にセンサーがつねに路面状況を検知し、電子制御で前後トルク配分を最適化する」4WDシステムの影響が大きい。ヘビー級ながら、前後車軸にかかる荷重は840kgずつ。BMWがこだわり続ける前後50対50の重量配分を達成している。

 320d・xドライブのパフォーマンスはのびやかで力強い。スポーティサルーンとして過不足のない加速が楽しめた。とはいえ、欧州市場用には設定されている軽量な後輪駆動仕様で、より強力で身軽な動力性能を味わいたいと思った。今後、後輪駆動モデルの日本発売に期待する。

IMG_1429.JPGxドライブは走行中にセンサーが路面状況を検知 速度やステアリング操作に応じて自動的に前後トルクを配分調整 前後重量配分は50対50 車重は旧型320d(FR)比130kg増

強靭なボディ。乗り心地はややハード

 満足度の高い動力性能に比べ、やや違和感を覚えたのはフットワークだった。試乗車はMスポーツ・グレード。標準仕様よりもハードなMスポーツサスペンションを採用している。だが、この点を考慮しても、路面の変化に対して乗り味の変わり幅は大きい。とくに、荒れた路面では、内臓が揺すられるような振動モードに襲われた。これには閉口した。乗り心地は相当にハードだ。タイヤは18インチのランフラット仕様。率直なところ、19インチタイヤを装着した旧型(後輪駆動仕様)のほうがランフラットを履きこなしている印象が強かった。

 320dはボディ剛性が非常に高く、ステアリング操舵感ががっちりとしていることもあり、ドライバーはまるでリアルスポーツをドライブしているかのような高揚感を得る。確かに固いが、乗り心地はぎりぎり容認できる。だが、助手席に座るパッセンジャーからは「固すぎて不快」と苦情が出た。

 路面によって乗り味が大きく変化する傾向は、330i・Mスポーツでも感じた。「普通のタイヤ」を履いた、Mスポーツ以外の仕様にも試乗してみたい。

IMG_1670.JPGインパネは先進イメージ 12.3インチフル液晶メーターと10.25インチセンターディスプレイを装備 スポーツステアリングのグリップ部は太くがっちりとした印象

IMG_1652.JPGMスポーツは前席電動調整機能付きスポーツシート標準 写真の本革はセットop

IMG_1627.JPGフル液晶メーターはセンターディスプレイとの連携で中央に各種情報を表示 速度計と回転計は対称デザイン

※次ページでスペックを紹介

BMW320d・xドライブMスポーツ主要諸元と主要装備

IMG_1466.JPG

グレード=xドライブMスポーツ

価格=8SAT 629万円
全長×全幅×全高=4715×1825×1430mm
ホイールベース=2850mm
トレッド=フロント1585×リア1570mm
車重=1680kg
エンジン=1995cc直4DOHC16Vディーゼルツインターボ(軽油仕様)
最高出力=140kW(190ps)/4000rpm
最大トルク=400Nm(40.8kgm)/1750~2500rpm
WLTCモード燃費=15.3km/リッター(燃料タンク容量59リッター)
(市街地/郊外/高速道路=未公表)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:5リンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:225/45R18/リア:255/40R18+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.3m

●主な燃費改善対策:筒内直接噴射/電子制御式燃料噴射/高圧噴射/過給器/充電制御/アイドリングストップ/電動パワーステアリング
●主要装備:ドライビングアシスト・プロフェッショナル(アクティブクルーズコントロール+ステアリング&レーンコントロールアシスト+車線逸脱警告+レーンチェンジウオーニング+アクティブサイドコリジョンプロテクション+前車接近警告+衝突回避・被害軽減ブレーキ+クロストラフィックウオーニング)/BMWコネクテッドドライブ・プロフェッショナル/アダプティブLEDヘッドライト/LEDフォグランプ/パークディスタンスコントロール/リバースアシスト/ランフラットタイヤ/Mスポーツサスペンション/Mスポーツブレーキ/ドライブパフォーマンスコントロール/バリアブルスポーツステアリング/Mエアロダイナミクスパッケージ/コンフォートアクセス/ヒーター付きウオッシャーノズル/BMWライブコクピット(12.3インチメーターパネル+10.25インチワイドコントロールディスプレイ+HDDナビゲーション)/マルチファンクションMレザーステアリング/パーキングベンチレーション/3ゾーンオートAC/スポーツシート/前席電動調整機構/スルーローディングシステム/アンビエントライト/スピーチコントロール(音声入力システム)/ワイヤレスチャージング/10スピーカーシステム
●装着メーカーop:イノベーションパッケージ(BMWレーザーライト+ヘッドアップディスプレイ+ジェスチャーコントロール)22万3000円/ハイラインパッケージ(ヴァーネスカレザーシート+ランバーサポート+ファイウッドトリム)20万1000円/コンフォートパッケージ(電動トランクリッド+ストレージパッケージ+Hi-Fiスピーカーシステム)12万5000円/サウンドパッケージ(ハーマン・カードン・サラウンドサウンドシステム+アコースティックガラス+地デジテレビチューナー)18万7000円/アクティブプロテクション4万7000円/パーキングアシストプラス6万円
●ボディカラー:ミネラルホワイト(op9万円)
※価格はすべて消費税(8%)込み リサイクル費用は1万9380円
※スペックは2019年7月現在

IMG_1494.JPGスタイリングは伝統のロングノーズ形状 320d・Mスポーツのパワーウエイトレシオは8.84kg/ps トルクウエイトレシオは4.20kg/Nm

IMG_1513.JPGトランク容量は480リッター 幅/奥行とも余裕がある 電動リッドはop

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