フェラーリ812スーパーファスト 試乗記
フェラーリ812スーパーファスト 価格:7SMT 3910万円 伝統のV12ユニットを搭載したフラッグシップ2シーターFRクーペ 2017年春にデビュー
ロングノーズと高性能パワーユニット。クルマの世界で「官能的』という言葉は、フェラーリのためにあるのではないか。視覚、聴覚など人間の感覚器官を刺激し、その欲望をそそる様子を指すのだから。812スーパーファストは6.5リッター・V12から驚異の800psを発生。最高速度は340km/hに達する。そこには異次元の世界がある。
全長×全幅×全高4657×1971×1276mm 車重1630kg パワーウエイトレシオ:2.04kg/ps 前後重量配分は47対53 駆動方式はFR
伝統のV12クーペ。エンジンはフロントミッドシップ配置
812スーパーファストはフェラーリのフラッグシップスポーツだ。パッケージングは、創業以来伝統のV12を搭載する2シーターFRクーペ。
812スーパーファストは、F12ベルリネッタの後継車として2017年のジュネーブ・モーターショーで登場。両車のスタイリング面での共通項は、フロントスクリーンとエンブレムの2点。それ以外のところはすべて刷新されている。前車軸の後方、低い位置に搭載(フロントミッド)した伝統のV12エンジンはストロークを伸ばして排気量を6.5リッターに拡大。ピストンやコンロッド、クランクケースなど、75%のパーツが新設計された。
高圧力の3スプリット・インジェクションシステムと、可変長インレットダクト、新型シリンダーヘッドの採用により、800psの最高出力と、全回転域におけるトルクの向上を図る。環境対応も万全で、CO2排出量は従来比で5%ほど減った。エグゾーストシステムや7速DCTは最新仕様にバージョンアップされている。
空力を徹底的に追求したスタイリングは、往年の「名馬」のイメージが漂う。1960年代後半から70年代前半の365GTB4(通称デイトナ)や、90年代後半の550マラネロを想起させる。インテリアは全面的にリニューアル。GTC4ルッソと同様のインフォテイメントシステムを大型ディスプレイに頼らずに設計された点がフェラーリらしい。
ドラマチックな加速と高度な操縦性に加えて優れた日常性が812スーパーファストの魅力 トップスピードは340km/h 0→100km/h加速は2.9秒でクリア
圧巻のシャシー統合制御システム。800psを自在に操れる
総合性能において、パワートレーンと並ぶ注目がSSC(サイド・スリップアングル・コントロール)と呼ばれるシャシー統合制御システムである。これはスポーツ走行時にEデフやF1トラック、SCM(磁性流体ダンパー)を統合的に制御し、誰もがホットなコーナリングを安心して走れるようにする電子制御機構。812用の最新バージョン(SSC5.0)は、後輪操舵システムと、フェラーリ初の電動パワーステアリングもトータルでコントロールする。
その効果は絶大。中でも衝撃的だったのはピーク・パフォーマンス・アドバイザーと名づけられた制御ロジックである。これは、コーナリング時に限界に至るプロセスを、SSCシステムが電動パワーステアリングのトルクを変化させることでドライバーに「やんわり」と伝えつつ、同時に駆動トルクを綿密に制御して、より素早いコーナリングを提供する機構。パワーオーバーステア状態になっても、ステアリングと縦方向加速の両方のトルクを絶妙にコントロール。ドライバーはドリフトアングルをしっかり維持したまま、コーナーを走り抜けられる。まさに魔法のような制御だ。昨今流行の「ドリフトモード」のひとつ、といっていい。
実際にサーキットで試してみた。出しゃばりすぎないパワーステアリングの制御もさることながら、絶妙な駆動トルクコントロールに驚いた。まるで経験豊かなプロドライバーになったかのように、800psを自在に操っている気分に浸れた。最高の体験だった。
6496cc・V12DOHC48V 800ps/8500rpm 718Nm/7000rpm 最高許容回転数8900rpm 3スプリット・インジェクションシステムと可変長インレットダクト採用 ハイレスポンス
官能的な加速フィール。速さとサウンドでドライバーを魅了
加速フィールは素晴らしい。最近の高性能車が失いつつある官能性に満ちている。8000rpm以上まで回したときの力強さとエグゾーストノートのハーモニーは、最高のごちそうである。ハイチューンの自然吸気12気筒エンジンが生み出すドラマチックな感覚を味わえるのは、おそらく812が最後だろう。
一般道では実によくできたGTカーの顔を見せる。ボクはトータルで2000km近く812のドライブを楽しんだ。従来のFR2シーターモデルとはまるで違う安心感たっぷりのライドフィールだった。低回転域におけるアクセルコントロールのしやすさと相まって、オールマイティに使えた。812スーパーファストは、これ1台ですべてがかなう、理想のスーパースポーツである。
インパネはダイナミック形状 各部レザー仕上げ エンジン始動ボタンやウインカーなどはすべてステアリング部に集約 ステアリングは滑らかな操舵フィール 視界に優れ取り回し性は良好
シートはサポート性を高めた本革ハイバック形状 フル電動調整機能はop 乗り心地は快適 GT性能はハイレベル
中央にタコメーターをレイアウト 9000rpm以上をレッドで表示 右側にインフォテイメント機能集約 左側は各種表示モードが選べる
※次ページでスペックを紹介
フェラーリ812スーパーファスト主要諸元
価格=7SMT 3910万円
全長×全幅×全高=4657×1971×1276mm
ホイールベース=2720mm
車重=1630kg
乗車定員=2名
エンジン=6496cc・V12DOHC48V
最高出力=800ps/8500rpm
最大トルク=718Nm(73.3kgm)/7000rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント275/35ZR20/リア315/35ZR20
駆動方式=FR
最高速度=340km/h
0→100km/h加速=2.9秒
※価格は消費税(8%)込み
※スペックは2019年7月現在
タイヤはフロント275/35ZR20/リア315/35ZR20のピレリPゼロ アルミは軽量鍛造 SCM(磁性流体ダンパー)標準装備 乗り心地は快適