ホンダNシリーズ安全技術体験会
新型NーWGNはホンダセンシング全車標準 衝突被害軽減ブレーキは横断自転車認識機能を追加 夜間の歩行者認知性能が一段と向上
ユーザーニーズが高まるKカーの安全性
軽自動車の勢いが止まらない。昨年の車名別販売台数ではホンダNーBOXを筆頭に軽自動車が上位5台を独占。トップ10でも7台が軽自動車になり、シェアは約40%に達した。買い物や通勤といったゲタ代わりのクルマとしてだけでなく、小型車や普通車から乗り換えるダウンサイザーが増えてきた結果だ。
ダウンサイザー組の多くは軽自動車を一家に1台のクルマとして使う。となれば当然、軽自動車で高速道路を使った長距離ドライブをする機会が増える。そんな使用シーンを考えると、軽自動車に高い安全性が求められるのは当然の流れだ。実際、安全性を軽自動車購入時の重視ポイントに挙げるユーザーは確実に増えてきているという。
安全性には大きく分けて2つある。衝突したときの乗員保護性能であるパッシブセーフティと、衝突を起こさないためのアクティブセーフティだ。ホンダNシリーズは、この両面に多くの技術を投入している。
NーBOXとインサイトの衝突実験シーン 走行速度50㎞/h(相対速度100㎞/h)/ラップ率50%のオフセット衝突では車重が軽いNーBOXが浮き上がった
衝突実験で最高ランクの優れた安全性能を証明
まずは衝突安全性能。軽自動車はボディが小さいため十分なクラッシャブルゾーンの確保が難しい。限られた潰れ代で衝撃を吸収するためには高度な設計技術が必要だ。今回はNーBOXと、1.5倍の重量があるインサイトとの衝突試験を見た。50km/h(相対速度100km㎞/h)、ラップ率50%のオフセット衝突という厳しい条件にもかかわらずNーBOXはきちんと生存空間が確保され、衝突後もドアが開閉できた。具体的な数値は示されなかったが、ダミーの傷害値は「十分に許容範囲内」だという。自動車事故対策機構が行っている衝突安全性能アセスメントで、軽自動車としては初めてファイブスター(最高ランク)を獲得した実力はダテではない。
クラッシャブルゾーンを確保するためのエンジン搭載方法や補機類配置の工夫に加え、衝撃を効率よく受け止めるフレーム配置、各部の補強など、NーBOXのボディには種々のノウハウが注入されている。そしてそれは新型NーWGNにも最適化したうえで受け継がれているという。
衝突後のNーBOX ボディは効果的に衝撃を吸収 衝突後もドアの開閉ができた N-BOXは衝突安全性能アセスメントで軽自動車初の最高評価(ファイブスター)を獲得
ホンダセンシングの安心機能と残された課題
事故を未然に防ぐアクティブセーフティも充実している。NーBOXやNーVANに搭載され高い評価を獲得している安全・運転支援機能、ホンダセンシングはNーWGNでいっそう発展した。衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、車線維持支援システム、歩行者事故低減ステアリング、ACC(アクティブクルーズコントロール)といった基本機能に変更はないが、衝突被害軽減ブレーキは夜間歩行者認識性能がさらに向上。横断自転車も認識して制動を行うようになった。また、ACCは新たに渋滞追従機能を追加。標識認識機能は今後増えていく英語併記標識対応になった。
夜間に事故のリスクが増えるのはご存じのとおり。また、自転車死亡事故の50%が出合い頭事故だというデータを考えると、夜間認識能力の向上と横断自転車認識は大きな意味がある。もちろん、週末の長距離ドライブでは、渋滞追従機能付きACCがドライバーの疲労を最小限に抑えてくれる。ただし車線維持機能は65km/h以上に限定される。この部分は日産デイズのプロパイロット(&三菱のMIパイロット)に及ばない。
もう一点不満を述べるなら、「ホンダセンシング全車標準装備」とうたいつつレスオプション車が用意されていること。「安全装備は必要ないから安く買いたい、というユーザーがいるため」とメーカーは説明するが、NーBOXのホンダセンシング装着率は95%。これほど支持を得ているのなら、正真正銘の全車標準装備にするべきだろう。
NーBOX、NーVANに続き、NーWGNの登場でNシリーズは新世代に移行する。クルマとしての魅力に加え、NーWGNの優れた安全性はダウンサイジングユーザーの背中を強く押すに違いない。
後方誤発進抑制機能は後方の障害物をソナーで検知 停車時や10km/h以下で後退時にアクセルを強く踏み込むと音と表示で警告 同時にエンジン出力を抑制する
Nシリーズのボディは相手車両との骨格のすれ違いを防止しながら衝突時のエネルギーをフロアとサイドシルに効果的に分散する安全設計 ピラーにも荷重を伝達し生存空間を確保