【クルマの通知表】ダイナミックな造形と走り。輸入車イーター、トヨタ・クラウン・スポーツPHEVの光る先進ポイント

トヨタ・クラウン・スポーツRS(PHEV)/価格:765万円。PHEVのRSは「操る楽しさ」に徹底的にこだわった環境対応モデル。走りはサーキットを走り込んで熟成させた。PHEVシステムは2.5リッターエンジン(177ps)+モーター(フロント182ps/リア54ps)+大容量バッテリーで構成。システム総合出力は225kW(306ps)

トヨタ・クラウン・スポーツRS(PHEV)/価格:765万円。PHEVのRSは「操る楽しさ」に徹底的にこだわった環境対応モデル。走りはサーキットを走り込んで熟成させた。PHEVシステムは2.5リッターエンジン(177ps)+モーター(フロント182ps/リア54ps)+大容量バッテリーで構成。システム総合出力は225kW(306ps)

ダイナミックな造形にふさわしい走り。PHEVは先進性も抜群

 クラウン・スポーツのスタイリングはダイナミックそのもの。その容姿は日本車全体を見回しても異彩を放つ。筆者の周囲ではデザインに造詣が深い人ほど評価が高い。
 走りも大きな注目ポイントである。 「スポーツ」というネーミングにふさわしく味付けされており、HEVと比較するとPHEVのフットワークは別物。サーキットで徹底的に走り込んで仕上げられている。まさにドライバーズカーだ。

スタイル

エンジン

 今回のテスト車、RSを名乗るPHEVモデルは、大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載。最大で90kmのEV走行を可能としたエコ性能が光る。だがそれだけではもちろんない。スポーツにおけるPHEVの位置付けは、付加価値を高めた、「走りも楽しめる」ハイパフォーマンスパージョンである。その完成度をレポートしよう。

 PHEVは出力密度の高い駆動用モーターを搭載している。システム最高出力はHEVの72ps増の306psに引き上げられており、動力性能はモーター(=EV走行)だけでもけっこう力強い。アクセルレスポンスは極めてリニアでダイレクト感がある。スピードの伸びは車速域が高くなるにつれて、だんだん頭打ちになる。だが頻繁に停止と発進をくりかえす市街地のような状況には最適。モーター特性は通常ユースに非常に向いている。

 ドライブモードは、ECO/NORMAL/SPORT/CUSTOMの4種に加え、モーター走行か電力を温存するかを切り替える「EV/HVモード切替スイッチ」があり、これを長押しするとバッテリーチャージモードになる。EV走行をメインにパワーが必要なときに自動制御でエンジンを始動する「AUTO EV/HVモードスイッチ」も選べる。PHEVの利点を活かせるモードが各種揃っている。

リア

タイヤ

 PHEVの足回りは特別仕様。HEVには未設定のAVS(減衰力可変サスペンション)を標準装備する。加えてベクタリング機構や後輪操舵システムで、HEVとの差別化を図った。ハンドリングの味付けはHEVに比べてかなりスポーティだ。その差は公道を普通に走っても味わえる。
 全体的に引き締まった 「スポーツ」らしい乗り味だが、AVSを搭載するPHEVは、NORMALモードではいくぶんしなやかになる。市街地の乗り心地はHEV以上に快適だ。

 対向6ピストンアルミキャリパーを備えたブレーキのフィーリングもなかなかいい。油圧式に比べるとどうしてもリニアでないところがあるが、違和感は小さめ。むしろいかにもキャパシティが高そうなことが印象的だ。
 安全支援技術もきめ細かい。中でも周囲の状況を先読みしてブレーキや操舵を支援するプロアクティブドライビングアシストの、前走車との適切な車間距離を保つ機能はとてもよくできていて使い勝手がいい。

ライト

充電リッド

 完成度が高いクルマだが、乗っていて気になってきた点があった。高速道路では意外とヒョコヒョコ動いて、アンジュレーションの影響を受けやすいのだ。フラット感が損なわれがちになる。市街地では普通なのに不思議だ。どうやら足回りがキレイに動いていない領域があるようだ。

 これは俊敏なハンドリングと操縦安定性、さらには235/45R21サイズの大径タイヤによるバネ下の重さを払拭するために施されたチューニングの影響ではないかと思う。あと少しの熟成を期待したい。

デザインと個性を楽しむクルマ。フレンドリーな乗り味も大切にしている

 取り回し性は意外に良好だ。この車体形状なので車両感覚は把握しやすいほうではない。全幅は1880mmとワイドだ。だがホイールベースとオーバーハングを切り詰めるとともに、後輪操舵の効果で小回りが利く。狭い道などで持て余す心配はない。トヨタ車らしいフレンドリーな味わいを大切にしている。駐車時の視界を補助する機能や自動駐車支援機能も充実している。

インパネ

セレクター

 室内はドライバーファーストだ。タイトな作りで、それが「スポーツ感」を演出している。ドライバー側はブラック、助手席側がレッドのアシンメトリーなインテリアは非常に印象的。助手席の乗員からは落ち着かないという声を聞いたが、このクルマならではの個性として尊重したい。

 後席も意外と使える。ドアの開口形状や開き方の影響で、乗降性はあまりよくないのだが、乗り込んでしまえば、スペース面で狭さを感じることはない。ウィンドウ形状と大きなフロントシートが適度にパーソナルな印象を感じさせるのもいい。足元もなかなか広い。

前シート

後シート

 スタイルのために荷室容量は割り切った、と開発者に聞いたが、日常的には不便に感じることのない広さが確保されている。リアシートを前倒しすると、床はやや高めだがほぼフラットになる。PHEVがHEVに対して狭くなっているようなこともなさそうだ。左右分割のトノカバーはナイスアイデア。ただし、開口形状との兼ね合いで、高さのある荷物は手前に積むとテールゲートと干渉しやすい。
 スポーツは、なによりエモーショナルなデザインが魅力。90kmもEV走行できてこれだけ走りもよいのだから、175万円の価格差なら頑張ってPHEVを買いたいと思った。

メーター

ラゲッジ

トヨタ・クラウン・スポーツRS(PHEV)/価格/765万円

チャート01

総合評価/77点

Final Comment

先進性とトヨタのクルマ作りの巧みな融合
モーターの魅力が日常的に味わえるのは◎

 唯一無二のスタイリング実現のために、パッケージングをはじめいろいろ割り切った点があるが、全体としてはそつなくまとまっている。使い勝手はなかなかよい。走りで印象的だった点はパワートレーンのよさ。モーターの瞬発力と力強さを日常的に存分に楽しめる味付けになっている。電費の計測結果は5km/kWh台。もう少し伸びてもよい気がしたが、テスト時は外気温が35度超だった影響も大きそうだ。足回りはよい面もあれば気になる面もある。今後、熟成されるだろう。

使い勝手

快適性能

動力性能

魅力

テストコース

エンブレム

諸元

真横

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