ランドクルーザー(以下ランクル)のシリーズ構成は、大別して「60→80→100→200→300」と続くステーションワゴン系と、ヘビーデューティな「70系」、その中間に位置する従来「プラド」と呼んでいたライトデューティ系の3タイプがある。
1990年に登場したプラドは70系に乗用車の快適性を与えたモデルだったが、世代を追うごとに高級志向が高まっていた。そこで 「原点回帰」を掲げて開発されたのが、今回の「250」だ。車名からプラドのサブネームが消えたのは、250を今後ランクルの中核に据えていくという意思表示と受け取れる。
250の骨格は300と同じGA-Fプラットフォーム。機構面での共通性は高く、300と同様に30年あまり前に最適値として導き出された2850mmのホイールベースを受け継いでいる。コンセプトは「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」というランクルのDNAを継承しつつ、どんな道でも「運転しやすく疲れない」という300に対し、「誰でも扱いやすく楽しい」と微妙に差別化された。
運転して印象的なのは、ランクル初となる電動パワーステアリングだ。操舵力が軽くスッキリとしたステアリングフィールである。オンロードでは取り回しがよく快適。オフロードでは凹凸や轍でもキックバックが小さく、ハンドルが取られにくい。300までは油圧式だったが、十分な耐久性と信頼性が確認できたことから、250は電動式に踏み切った。操舵支援の制御が300よりもずっと正確になっているあたりも、新世代のランクルのあるべき姿として歓迎したい。
エンジンは直4の2.8リッターディーゼル(204ps/500Nm)と2.7リッターガソリン(163ps/246Nm)が選べる。力強く経済的なディーゼルが本命だ。
ランクルの醍醐味となる悪路走破性は、最新デバイスが支えている。機能が拡充されたマルチテレインセレクト(MTS)は、世界的にもこれほど完成度の高いものはないと思えるほど。適宜モードを選択してアクセルを踏んでいれば、本当にどんな道でも前に進んで行ける。モーグルや急勾配のガレ場では、ワンタッチでフロントスタビライザーをフリーにすることでサスペンションストロークを伸ばし接地性を確保する、トヨタ初の機構「SDM」が役に立つ。さらにクロールコントロールを使うと勾配のきつい場所も一定速を自動的に維持してくれてより簡単に走れる。
ヘビーデューティの70系とは正反対に、ライトデューティやステーションワゴンのランクルは新しい技術をどんどん取り入れて、一段と走破性を高め、いかに簡単で快適に走れるかにも取り組んでいる。
悪路走破性能は250と300は互角の印象。250は自らの手で操っている感覚が色濃く、大差はないボディサイズだが、300より小さくて軽く感じられる。そこには確かに「扱いやすさ」と「楽しさ」があった。