日本のとくに都市部で生活しているとピンと来ないが、世界ではランドクルーザー(以下ランクル)の本質である「どこへでも行き、生きて帰って来られる」性能を必要としている人が大勢いる。
ランクルが世界中で愛用されているのは、その圧倒的な走破性と信頼性が評価されているからである。ランクルの礎を築いたのは、1951年に当時の警察予備隊の要請で開発された「トヨタBJ」をルーツとする、ヘビーデューティな20系(1955〜60年)、40系(1960〜1984年)、その直系の70系だ。
70系は1984年に登場。日本での販売は2004年に一旦終了した。ファンの間では、海外で現役モデルとして継続販売されていることが知られており、日本での再販を求める声が絶えなかった。その声に応え、2014年には期間限定で「誕生30周年記念車」が発売された。
さらに、2023年8月には日本での再々販が発表される。今回は限定ではなくカタログモデルだ。復活した70の再々販モデルは、従来とできるだけ変えず、変えても最小限にとどめ、変えるなら従来の性能を上回ることを念頭に置いて開発したという。
最新版の70は基本はそのままに各部をアップデートした実力車である。従来は1ナンバー登録の商用車だったが、3ナンバーのワゴン車に変更され、パワートレーンは2.8リッター直4ディーゼル(204ps/500Nm)と6速ATを組み合わせる。
過酷な環境で使っても耐えられるよう、パートタイム4WDや前後リジッドアクスルやリーフスプリングはそのまま踏襲。ただし乗り心地を改善するために大幅に手が加えられている。
2014年の再販モデルは舗装路で乗っても突き上げが強く、まるでトラックの荷台に乗っているかのようだった。最新版は伝統の本格四駆としてはかなり快適な乗り心地に仕上がっている。
いまどきあまりないスローなステアリングのため、曲がるときには切り遅れがちになるが、おかげでゆったりとリラックスして走れる。70で流していると些細なことは気にならなくなる。
未開の地でも修理に困らないよう、電子制御デバイスはこれまではあえて極力排していた。最新版は本当に必要なものを厳選し、VSCとTSC、そして一定速で勾配を登降坂できる機能を採用した。機能は限られるものの、予防安全パッケージ、Toyota Safety Senseが初めて導入されたことも特筆できる。ただし250や300のマルチテレインセレクトに相当する高度なデバイスは搭載されていない。
日本ではデザインに惹かれたファンが大半だろう。だが70は長年ランドクルーザーを支えてきた主力だ。世界では堅牢性や信頼性といったクルマとしての高い実力が支持されている。日本では、その走破性とタフさを発揮するシーンは少ないかもしれない。だが、秘めた実力は本物中の本物。存在そのものが光る生粋のレジェンドである。