スズキは2024年11月4日、イタリア・ミラノで初の世界戦略BEVの量産モデル「e VITARA」を公開した。e VITARAはインドのスズキ・モーター・グジャラート社で生産され、2025年夏頃から欧州、インド、日本など世界各地で販売がスタートする予定である。またトヨタにもOEM供給することが決定しており、トヨタ・ブランドの一員としてもワールドワイドで販売される。
e VITARAは、2023年1月にインドで開催されたAuto Expo、日本では同年10月のJAPAN MOBILITY SHOW2023でプロトタイプ(e VX)を公開。今回発表された量産バージョンは、e VXの力強く、スタイリッシュなイメージをそのままに、タフに使えるBEVに仕上げられている。
スタイリングのテーマは「High-Tech Adventure」。BEVらしい先進性とSUVならではの力強さを融合した。エクステリアは大径タイヤとロングホイールベースが特徴の存在感を重視した造形。ボディサイズは4275×1800×1635mmと取り回し性に優れた設定だ。
BEVユニットとプラットフォームは、スズキ/トヨタ/ダイハツの3社が、それぞれの強みを活かして共同開発しており、信頼性、パフォーマンスは高水準。ラインアップはバッテリー容量49kWhの2WDモデルと同61kWhの2WD/4WDの3タイプを用意する。モーター出力/トルクは、49kWh仕様が106kW/189Nm。61kWh仕様は2WDが128kW/189Nm、4WDは135kW/300Nm。スズキらしくBEVながら車重が1702〜1899kgと、比較的軽量に仕上げられていることもあり、走りはなかなか良さそうだ。とくに4WDは2つのeAxleを配置したALL GRIP-eを名乗る本格システムを採用。スズキならではの4WD技術を活かし、パワフルさと優れた走破性を両立。片側のタイヤが浮くような路面でも空転したタイヤにブレーキをかけ、反対側のタイヤに駆動トルクを配分するTrailモードも備えている。最低地上高は180mmを確保している。
ちなみに駆動用バッテリーには、安心・安全を追求したリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。BEV専用に開発されたHEARTECT-eプラットフォームは、メインフロア下のメンバーを廃止し、電池容量の最大化を計算した。
鈴木俊宏社長は「e VITARAは、お客様にとって使いやすいBEVとするため、試行錯誤を重ねて開発したスズキ初のBEVです。当社はカーボンニュートラル社会の実現に向け、BEV、ハイブリッド車、CNG車など、地域に適した選択肢を提供していく予定です。中でもe VITARAは、カーボンニュートラル実現のための非常に重要なマイルストーンと考えています。このクルマを皮切りに、今後さらにBEVラインアップを拡充するとともに、それぞれの国や地域に適所適材なモビリティを提案してまいります」とコメントしている。
スズキは、世界で最も人口が多いインドで高いシェアを持つメジャープレーヤーである。e VITARAは、そのスズキが世界市場を想定して開発されたニューカマーBEV。その完成度には期待が高まる。ここ数年で、スズキは世界でのイメージが大幅にアップする可能性大だ。