【スーパーカー新時代】ポルシェ911もいよいよ電動化。カレラGTSはスポーツカー専用「T-ハイブリッド」で新たな走りへ

GTSが搭載する「T-ハイブリッド」は新開発3.6リッターフラット6と2モーターの組み合わせ。モーターはターボコンプレッサーとタービンホイールの中間、そして8速DCT内にレイアウト。システム出力は541psに達する

GTSが搭載する「T-ハイブリッド」は新開発3.6リッターフラット6と2モーターの組み合わせ。モーターはターボコンプレッサーとタービンホイールの中間、そして8速DCT内にレイアウト。システム出力は541psに達する

「ターボのように」使うのではなく、「ターボにモーターを追加」。そこが新しい

「最新が最善」。それは、1963年のデビューから今日まで、8世代に渡って911が貫いてきたフィロソフィーである。911は「ターボ」(930型)が誕生して50周年の節目で、カレラGTS&カレラ4GTS(992-2型)が「T-ハイブリッド」へと進化した。

クーペ

システム

 T-ハイブリッドは、2010年にライバルに先駆けて登場したスーパースポーツの918スパイダー、レーシングカーのGT3Rハイブリッドの系譜を引き継ぐスポーツカー専用2モーター・ハイブリッドシステム。GTS用に新開発した3.6リッターフラット6に、シングル形状の電動ターボを組み合わせ、8速DCT内にもう1基のモーターを配置している。400Vのリチウムイオンバッテリー(1.9kWh)は、フロントに搭載。重量バランスの適正化を図った。

 T-ハイブリッドのシステム総合出力&トルクは541ps/610Nm。従来GTS比で61psもパワフルになり、0→100km/h加速は3秒でクリア、トップスピードは312km/hに達する。ポルシェは、ハイブリッド車をシリーズのトップモデルに位置づけるのがつねだが、911の場合も例外ではない。

電動ターボが圧倒的なパワーとレスポンス実現。システムは軽量さもポイント

 システムのハイライトは、電動ターボチャージャーにある。コンプレッサーとタービンホイールの間に組み込んだモーターが、瞬時にブースト圧を引き上げる。この結果、低速域から優れたレスポンスをもたらし、事実上ターボラグはゼロ。ドライバーの意思に即座に応え、無類にパワフルなキャラクターに仕上げている。ウェイストゲートのない電動ターボは、1基のターボで従来のツインターボ以上のパワーを実現。しかも排気フローからエネルギー回収(最大11kW/15ps)を行い、効率の改善にも貢献する。

 もう一つのモーターは8速DCT内に組み込んだ永久磁石式。アイドリング回転数でも150Nmの駆動トルクでサポートし、最大40kWの出力向上を実現する。

タルガ01

タルガ02

 走りの主役となる水平対向6気筒エンジンは新開発である。可変バルブタイミング機構「バリオカム」とロッカーアーム式バルブ駆動機構を採用し、マップ全域でストイキオメトリー(理論空燃比)を実現した。新エンジンが単独で発生する出力/トルクは485ps/570Nm。排気量は3.6リッターである。新エンジンは高電圧システムにより、エアコンの電動化を実現。その結果ベルト駆動系が省略され大幅なコンパクト化も達成している。

 T-ハイブリッドは軽量な点もポイントになる。GTSの車重は1595kg。旧型比50kg増に過ぎない。一般的なハイブリッドシステムが100kg超の重量増を招くことを考えると、大幅に軽いことが理解できる。しかも50kgの中には追加装備も含まれている。純粋な電動ユニット重量は25kgという。

タルガ真横

 ハンドリングも注目点。GTSはリアアクスルステアリングが標準装備され、高速走行時の安定性が一段と向上した。PDCC(ポルシェ・ダイナミックシャシーコントロール)のアンチロール安定化機能は高電圧システムに統合され、精度を高めた。足回りは可変ダンパーシステム(PASM)を備えたスポーツサスが標準。10mm低い車高が意のままのフットワークを約束する。

 スタイリングはさらにダイナミックさを増した。GTSのフロントバンパー左右には垂直のエアフラップを装備。フロントスポイラーリップや、ドアミラー、アンダーボディ、アクティブディフューザーなどの形状も見直すことで、大幅な空力向上を成し遂げた。シングルターボ化に伴いエグゾーストパイプの取り回しが変更され、ステンレス製テールパイプが中央寄りにマウントされたのもポイント。ちなみに刺激的なサウンド体験のため、GTSは一部の遮音材が取り外され、スポーツ心臓の鼓動と脈動がリアルに伝わるよう演出されたという。

室内

 装備も充実している。アルミは20/21インチのレーシーなGTSデザイン。スポーツクロノパッケージが設定され、メーターは回転計を含めフルデジタル化。タイヤ温度表示機能もプラスされた。

 ところで「最新は最善」なのは、T-ハイブリッドのGTSだけではない。992-2型は素のカレラも魅力的に変身している。3リッターフラット6ツインターボ(394ps/450Nm)に組み込まれるタービンは従来のGTS用、インタークーラーはターボ・グレード用を採用する。つまり、ポテンシャルがグッと上がった。つねに技術に磨きをかけ完成度を高めるのがポルシェの流儀。911はその代表である。

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