ランボルギーニはユニークなブランドだ。そもそもはその尖った個性から生まれた。現在はVWグループに属している。ランボルギーニ目線でいえば、周りにポルシェやアウディ、ベントレーなんてブランドがあり、技術の共有が頻繁に行われている。ブガッティなんてモンスターもそう。ウルトラ富裕層向けの超ド級マシンもVWグループの一員である。長年ランボルギーニの舵を取るステファン・ヴィンケルマン氏は一時期そのモンスターの指揮も執っていたことがある。いうなればグループ内の配置転換だ。
何がいいたいかというと、彼らはそんな大きなグループに属していながらある意味「唯我独尊」を貫いている。「ランボルギーニはこうあるべき!」をしっかり主張し、それを具現化しているのだ。ここで紹介するレヴエルトはそんなスピリットから生まれた。昨年ブランド誕生60周年を記念して発表されたレヴエルトは、ランボルギーニ、いやスーパーカーの新世代を表現している。電動化されたパワーソースを巧みに操る技術力と発想力の高さは、「新しさ」しか感じない。
まずはそのパワーソースから説明しよう。主軸となる内燃機関の型式はL545型となる。排気量6.5リッター・V12の自然吸気ユニットで、単体の最高出力は825hp、それを9250rpmという高回転で発揮する。基本のブロックは継承するが、ヘッド周り、インテークシステム、燃焼システムを再設計し、圧縮比アップも行った。
レヴエルトはこのユニットをミッドシップにマウントしてリアタイヤを駆動させる。つまり定石は崩さない。が、それとは別にモーターを3基搭載した。左右のフロントタイヤに駆動用モーターが1基ずつと、リアのトラクションをアシストする用に1基だ。システム最高出力は1015hp。レーシングカーでも見かけない4桁である。
フレームも当然再設計された。カーボンファイバーのモノコックボディとフォージドコンポジットのフロントサブフレームを採用する。フォージドコンポジットはカーボン繊維を細かく裁断し、そこに樹脂を流し込んで固めた素材である。そしてセンタートンネルにリチウムイオン電池を効率よく収める。電池パックのサイズは全長×全幅×全高1550×301×240mm。
実際に走らせた感想に話を進めよう。レヴエルトのステアリングを握ったのは今回が2回目で、最初は富士スピードウェイだった。路面がウェットだったのでそれなりのスピード域だが、制御系がしっかりコントロールしていたのが印象的だった。粗雑なところはなく、精緻な制御に驚かされた。リードカーのリアタイヤが巻き上げる水しぶきで視界不良の中でも、踏めるところは踏める挙動の安定感に技術力の高さを感じた。
といった印象をもとに今回は一般道を走らせた。湾岸エリアの比較的交通量の少ない場所だ。そこでまず感じられたのは乗り心地のよさ。実はサーキットでもそう思っていたが、リアルにそうだった。フロント21インチ、リア22インチのロープロファイルタイヤを履いているにもかかわらず、一般道の路面でもしなやかさがある。ダンパーが働いて、バネ下での入力をそのままシートに伝えない。
この性格はドライブモードで変わる。「CITTA」、「STRADA」、「SPORT」、「CORSA」がそれで、幅広い路面状況に対応する。「CITTA」はEV走行、「STRADA」はデフォルトとなる一般道でのハイブリッド走行に適している。なので、「ランボルギーニらしさ」を求めるなら「SPORT」、「CORSA」。そこでのエンジン音が真骨頂であることに頬が緩む。
この他ではハンドリングの正確性、ボディ剛性の高さが目立つ。ひとつの完成形だったアヴェンタドールと比較しても、そこからの進化がはっきりとわかる。ボディがたわんだムルシエラゴが懐かしい。
レヴエルトは全方位的にスーパーカーとして高いレベルにある。背景にVWグループの技術が潜んでいるのは明白だが、それを彼らの個性に昇華させている。さすがといいたい。