ランチアは1906年創業のイタリアの名門。2024年11月27日に118周年を迎えた。日本ではランチア・ストラトスやデルタHFインテグラーレによるWRC(世界ラリー選手権)制覇のイメージが強いが、欧州では、革新的で、優雅な印象の上質ブランドとして定着している。
とはいえ、近年は存在感が急激に落ちていたのも事実。販売モデルは、すでに10年以上が経過した3代目イプシロン(日本ではクライスラー・イプシロンとして少数販売)のみ。歴代イプシロンは、累計300万台の販売台数を誇るヒット作だが、その成功はあくまでイタリア国内に限定されていた。
そのランチアが、再び力強い歩みを取り戻しそうだ。ステランティスは、2024年以降、2年ごとに合計3台の新世代ランチアを投入することを宣言。その手始めに新型イプシロンを披露した。
新型は、名称こそ継承するが、内容は100%ブランニュー。2025年に日本にも登場するアルファロメオ・ジュニアや、先頃発売され好評を博しているフィアット600eと同様のe-CMPプラットフォームを採用し、ブランド初のBEVとICEモデルを用意する。セグメントはMINIやアウディA1などが属するプレミアムBに属する。
イプシロンの強い意気込みが伝わるのは、そのラインアップだ。通常モデルに加え、久々にランチアの象徴であるHFを設定した。HFは240psのハイパワーモーターを搭載したBEV。0→100km/h加速を5.8秒で駆け抜け、航続距離は403km。専用チューンの足回りを組み込む。内外装も、かつてのデルタHFインテグラーレの興奮が蘇るコンペティティブな雰囲気だ。なおランチアはWRCへの参戦も行うもよう。マシンはBEVではなく「ラリー4 HF」を名乗り、212psの1.2リッターターボを搭載。5速MT仕様で、駆動方式はFF、独自の機械式LSDを備えるという。
新型の本格販売は2025年の第2四半期にスタート予定。それに先駆け、イタリア国内では高級家具ブランド、カッシーナとコラボした限定車、エディツィオーネ・リミターカ・カッシーナの受注が開始された。価格は3万9999ユーロ(約680万円)、販売台数は1908台だ。限定車はイメージリーダーとなる標準BEVがベース。156ps/260Nmのモーターを搭載し、駆動バッテリー容量は54kWh。購読距離は400kmに達する。
イプシロンは鮮烈なスタイリングの持ち主である。造形は2023年発表のコンセプトカー「Pu+Ra HPE」のイメージを投入。独特のフロントマスクと、シャープで豊かなサイドビュー、そしてストラトスを彷彿させるリアランプが新鮮さを演出する。リアドアのオープナーをCピラーに配置し、Ypshilonのロゴにはクラシカルな筆記体を用いるなどディテールも凝っている。
室内は空調やインフォテインメント、照明などの「環境設定」をボタンや音声でワンタッチ設定できる「S.A.L.Aシステム」を導入。「S.A.L.A”はSound/Air/Light/Augmentetion」に由来するが、イタリア語でリビングルームを意味する「Sala」とも関係している。インパネはドライバー正面と中央に10.25インチディスプレイを備えたデジタル仕様。センターコンソール上部には「コーヒーテーブル」と命名したユーティリティスペースが用意された。シートはベロア張りの快適なダブルキルティングタイプ。限定車は運転席にマッサージ機能を備える。
現在ランチアは、イタリア国内に「カーサ・ランチア」という専門ディーラーを160店舗展開。ブランド活性化を目指し2025年にはフランス、スペイン、ベルギー・ルクセンブルク、オランダ、ドイツの主要都市に70店舗をオープンする計画だ。日本導入の予定はまだないが、ランチアはクルマ好きの琴線に触れる存在。ぜひとも販売してほしい。
グレード=Ypsilon
全長×全幅×全高=4080×1760×1440mm
ホイールベース=2545mm
車重=1561kg
モーター種類=交流同期発電機
モーター最高出力=156hp(115kW)
モーター最大トルク=260Nm
一充電走行距離(WLTPモード)=310km
交流電力量消費率(WLTPモード)=145Wh/km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池(48.1kWh)
駆動方式=FWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.15m
0→100km/h加速=7.8秒
最高速度=150km/h
※スペックは欧州仕様