日産セレナに、ドライバーズモデルのオーテック・スポーツスペックが登場した。既存のオーテック・モデルをベースに、爽快な加速フィールと、ハンドリング&快適性を徹底追求したファインチューンドバージョンである。
e-POWERシステムは走行モードごとのセッティングを改善。スタンダード・モードの場合は余裕を、スポーツでは意のままの素早さを演出した。そのうえで、高速走行時の安定性を一段と高めるとともに、ワインディングでも楽しめるようフットワークをチューニングしている。スポーツスペックを名乗るのにふさわしい改良が施されているのだ。
理想の実現のための手立ては入念である。パワーユニットを制御するVCM(ビークル・コントロール・モジュール)は専用品。足回りはダンパー&スプリングともに改良され、タイヤは215/55R17サイズのミシュラン・パイロットスポーツ5を装着する。
さらに、パワーステアリング特性も見直され、ボディは各部の補強とパフォーマンスダンパーで、より強靭になっている。
実力は本物。試乗で、走り好きのドライバーが好む味付けになっていることを確認した。加速はスタンダードモードでも力強く、スポーツを選ぶとスポーティカーの気分。優れた安定性としっかりとしたハンドリングにも驚いた。
しかもセカンド&サードシートでも乗り心地は良好。セレナ本来の「どの席でも快適」なキャラクターはそのままだ。これで価格は標準オーテック比で19万円ほどしか高くなっていないのだから、満足感はすこぶる高い。
オーテックは、スカイラインの父といわれた櫻井眞一郎氏が立ち上げたブランドである。櫻井氏が手がけたスカイラインは、単に速さを誇るのではなく、走りの質そのものにこだわっていた。だからこそGT-Rだけでなく、標準のGTも絶大な人気を獲得したのだ。今回、スポーツスペックに触れ、そんなことを思い出した。