新型3代目フリードは好調な販売セールスを持続している。価格が手ごろで、小回りのきくコンパクトサイズながら室内空間は広々。3列目まで大きな不満はなく、両側スライドドアを備えるといった具合に、すべてが「ちょうどいい」」ことが、人気の要因だろう。
新型のプラットホームは従来モデルをキャリオーバーした改良版。機構面は、主力となるハイブリッドをi-DCDから、最新世代のe:HEVに変更した。e:HEVユニットを収めるため全長が45mm伸びたが、2740mmのホイールベースに変更はなく、取り回し性のよさはそのまま維持した。
内外装の雰囲気はモダンな印象。水平基調のボディラインに大きなグラスエリアを備え、シンプルで万人向けのものとされた。2代目は前進感を強調した造形で、あらためて見るとややアクが強かったように思えてくる。
インテリアもスッキリとした。水平基調のレイアウトで全体的に丸みをおびた形状のインパネにソフトパッドを用いて質感を高めている。明るい内装色はエアーのイメージによく似合い好印象だ。
運転席からの視界は良好。旧型ではステアリングホイールの上にあったメーターが内側に移され、ダッシュの上面が低く平らにされたことで、見通しのよい視界を実現している。ただし、車体剛性や衝突安全性の確保のためだろう、左前方のピラーの付け根部分がやや太いことは気になった。右前方は角度的にあまり気にならない。
ホンダならではのサイドアンダーミラーは、小さなものだがあるとかなり重宝する。あらためてナイスアイデアだと思う。ちなみに眼前のメーターは、TFT液晶パネルの表現力を生かして、さまざまな情報を見やすく表示。新しさを感じる要素のひとつだ。
室内の実用性は、相変わらずハイレベルだ。収納スペースはそれぞれ容量の大きさを重視したとのことで、豊富に設定されているうえに、ユーザーの立場に立って使いやすさが吟味されている。さすがである。
室内フロアは、後方にいくにしたがい斜めに高くなるシアターレイアウト。低床設計により前後とも乗り降りしやすい。ウォークスルーへの配慮もなされている。e:HEV車は運転席と助手席の間のフロアがやや膨らんでいるのが気になるといえば気になるが、些細なマイナスである。
シートは上質な作りが印象的。上級機種の骨格を用いたというだけあって見た目の印象以上に体をしっかり保持してくれる。
1列目シートは、後席乗員への配慮からヘッドレストと肩口が小さくされ、2列目のキャプテンシートも座り心地に優れる。3列目は従来とは着座姿勢が変わったが、スペース性は十分。狭苦しさを感じさせないのは従来どおり。
サイドウィンドウの面積が広くなり、シート形状も工夫された結果、2〜3列目に座っても見晴らしはよく閉塞感があまりない。コンパクトクラス初の後席空調が設定されているのも朗報。6人乗りなら2〜3列目間のウォークスルーも自在にできる。3列目を頻繁に使うユーザーも、フリードなら大きな不満を感じることがないだろう。
ラゲッジスペースも実用性が高い。3列目シートはヒンジ形状が見直されて跳ね上げた際に格納位置が低くなるように工夫された。そのメリットで積載スペースの横幅が広くなり、しかもウィンドウをふさがないようになっている。テールゲートは手動式だが、開口部も荷室のフロア形状も隅まで広く使えるように努力した様子がうかがえる。こうした細かな改良の積み重ねで、より快適で使いやすく進化していることが実際に使ってみるとよくわかる。
走りはひと言でいうと乗りやすくて快適で、不満らしい不満がほとんどない。すべてが軽やかで滑らかだ。
e:HEVのフィーリングはリニアかつスムーズ。モーター駆動が主体の強みで、力強く発進し車速のコントロールもしやすい。車速域が高まるとだんだん頭打ちになってくるが、市街地+αではとても扱いやすい。燃費計測の結果(32.8km/リッター)もかなりよかった。
軽い中にもしっかりとした感覚のある電動パワーステアリングのフィーリングは、車速域を問わず良好だ。
快適性も十分に確保されている。ただし、2列目の乗り心地そのものは悪くないがやや振動が出ていた点と、静粛性がおおむね高い中でタイヤの音だけ少々目立って感じられたことは指摘しておきたい。
最新のHonda SENSINGが搭載されているのはよいのだが、ACC作動中にステアリングホイールを握っているのに誤警報がよく出るのが少々気になった。
フリードは全体としては、快適性も利便性も高く、3列目までしっかり使えるコンパクトミニバンである。十分に満足できる仕上がりだった、アウトドア指向を高めたクロスターという選択肢も魅力的である。新型も2代目と同様にロングライフモデルになりそうだ。
総合評価:78点
Final Comment
誰にとってもフレンドリーで使いやすさ満点
e:HEVの滑らかさと燃費。そして快適性の高さが際立つ
高得点の理由は、全体的にそつなく仕上がっていたから。e:HEVの採用と、走りの味付けが快適性重視になっていた点がプラスに作用した。3代目は走りと乗り心地が大幅にリファインされた。ガソリン車の走りも悪くはないが、比べるとe:HEVのほうがだいぶアドバンテージがある。驚いたのは燃費のよさだ。まさか30km/リッターを上回るとは思わなかった。e:HEVの販売比率が圧倒的に高いというのもうなずける。力強い印象のスタイリングを持つクロスターも魅力的だ。