クルマの魅力を「新たな体験」と考えた時、最も魅力的で鮮烈なモデルが登場した。2025年1月、アメリカ・ラスベガスで開催されたCES2025でベールを脱いだホンダ0(ゼロ)シリーズの市販プロトタイプである。ホンダ0シリーズは、昨年のCESで開発の方向性と造形イメージを公開した次世代ホンダを象徴するBEV。「Thin,Light,and Wise(薄く、軽く、賢く)」という独自の開発アプローチにより、まさしくゼロから生み出されたブランニューモデルだ。
今回発表されたのは、2026年から北米を皮切りにグローバル市場に投入する「0 SALOON(サルーン)」と「0 SUV」の2タイプ。ともに“ASIMO OS“と名付けられたビークルOSを搭載し、クルマ自身がユーザーの嗜好やニーズに合わせて進化・発展するソフトウェアデファインドビークル(SDV)に仕上げられている。
スタイリングは、サルーン、SUVとも、昨年公開されたモデルのイメージを発展。サルーンは、ガルウイングタイプだったドアが、通常タイプに変更されたものの、まるでスーパースポーツのように風を切り裂くウェッジシェイプは健在。圧倒的な存在感と、フル4シーターの快適で広い室内空間を実現している。
もう1台のSUVは、サルーン以上に個性的。SUVという名称から連想するイメージはまったくない。ホンダはSUVについて「EVで実現したい空間価値を追求、開放的な視界と自由度の高い広々とした居住空間を実現した」と説明する。背の高いシルエットとロングルーフが印象的な新たなピープルムーバーという雰囲気の持ち主である。
0シリーズは、数々の新技術を搭載するが、今回のCES2025では自動運転レベル3技術や、ユーザーごとに「超・個人最適化」された移動体験など、主に「Wise」の部分がフィーチャーされた。
自動運転技術では、サルーン/SUVともにレベル3(アイズオフ)を実現。実質的にドライビングをクルマ側に任せることを可能とした。ホンダは2021年にレジェンドに「ホンダセンシングエリート」を搭載。世界初の自動運転レベル3を実現したが、0シリーズ用はその発展版。自力でデータの規則性や特徴を導き出す「教師なし学習」と、熟練ドライバーの行動モデルを組み合わせた独自のAI技術により、想定外の出来事にも素早く適切に対処、信頼性の高い運転支援を実現するという。
0シリーズでは、まず高速道路での渋滞時アイズオフからレベル3自動運転技術を展開。OTA(Over The Air)による機能アップデートを通じ、しだいにその利用可能範囲を拡大する計画だ。
独自のビークルOSは、懐かしいヒューマロイドロボット「ASIMO」の名を冠した専用設計。「世界中に驚きと感動を与え、次世代EVの象徴となることを目指して命名した」と説明する。ASIMO OSは、ソフトウェアプラットフォームとしてAD(自動運転)/ADAS(先進運転支援)/IVI(In-Vehicle Infotainment=車載インフォテイメント)を制御するECUを統合的にコントロールする。
ASIMO OSを基盤として車載OSを常にアップデートすることで、0シリーズは移動の楽しさや快適性、人車一体の操る喜びなど、広範囲のクルマの機能をOTAで進化する。しかもその進化は、ユーザーそれぞれの好みやニーズに合わせたものになるというから楽しみだ。
テクノロジーは時代を象徴する。クルマはそれを実感できる存在だ。ホンダ0シリーズは、クルマの近未来を提示している。
*編集部よりお詫びと訂正:タイトルに誤記があり訂正しました。読者の皆様にはご迷惑をおかけて申し訳ございません。