フィアット・グランデパンダ。グランデパンダは、ボディサイドに「PANDA「、リアゲートに「FIAT」をあしらう。パワートレーンは最高出力83kWのBEVと1.2リッターターボを積むMHEVを用意。駆動方式はFWDだがルックスは4×4イメージ
2011年に登場し、現在も生産されている3代目パンダ。本国イタリアではベストセラーで、新型グランデパンダ(大きなパンダ)が登場した後は、新たにパンディーナ(小さなパンダ)という可愛らしい名前に変更してもうしばらくは生産を続けるらしい。筆者のような2代目パンダ好きには朗報である。私は3代目パンダのオーナー。4×4からクロスに乗り換えて、京都で便利に愛用している。3ペダルであることも好んで乗る大きな理由のひとつだ。
ジウジアーロの初代パンダに憧れた世代にとって、コンパクトなボディサイズは重要なポイント。ハナから「でっかい」と名乗ったパンダの第一印象はさほどよくなかった。けれど、スタイルをじっくりチェックしてからは考えが少し変わってきた。サイズは確かに大きくなったけれど、カタチはまさにパンダ。それもオリジナルパンダのデザインを再解釈したスタイルである。肝心のボディサイズも全長を4m以下になんとか押し留めるなど、「でっかい」と宣言しつつも大き過ぎるといわれないようにまとめてきた。
グランデパンダは、ステランティスグループの「スマートカー」プラットフォームを採用する。要するにシトロエンC3あたりと姉妹車になるわけだ。フル電動はもちろんハイブリッドパワートレーンにも対応したグループのマルチユースな主力車台である。
ボディサイズを報告すると、全長×全幅×全高3990×1760×1570mm。国産車でいえばマツダCX-3やトヨタ・ヤリスクロスの全長をもう少し縮めたくらいの大きさだ。要するに現行パンダよりもひと回り大型化したとはいえ、街中で使いやすいサイズを保ったということ。このセグメントは昨今軽く全長4mを超えている。それ以下に抑えたサイズは、新型グランデパンダの大きな美点のひとつだろう。ちなみに現行パンダの全長は3.7mしかないけれど。
パンダはイタリア市場でピープルムーバーの第一選択肢として高い人気を誇っている。フィアット500よりも人気だ。実際、イタリア中どこへ行っても現行パンダをよく見かける。とくに4×4の人気は根強く、都会でも田舎でも本当によく出会う。イタリア好きのオーナーとしてはなんだかうれしくなってしまう。
グランデパンダがそこまでの人気モデルになるかどうか、現時点ではイタリア人の反応を知らないのでなんともいえない。けれどもまずはフル電動とハイブリッドの2種類が登場し、価格も他モデル(たとえばフィアット500e)に比べてかなり低めに抑えられているから、それなりに人気は出そう。
フル電動モデルは44kWhのバッテリーを積み、最高出力83kWで満充電での航続可能距離はおよそ320㎞。ハイブリッドは1.2ℓ3気筒+48Vシステム+6ATで100hp。まずは十分なパフォーマンスといってよさそうだ。
前述したようにスクエア基調のエクステリアデザインは初代パンダを強く意識している。ボクシーなフロントフェイスはその昔のトヨタ車にもあったような感じだが、LEDヘッドランプをピクセル風にデザインして未来風味を演出した。対してリアからの眺めは、リアライト回りの雰囲気など実にオリジナル・パンダっぽい。ブランド名を凸凹プレス加工で表現したあたりも昔のアイデアを再現している。
インテリアもユニーク。オリジナル・パンダといえば棚のようなデザインのダッシュ回りがいまでも記憶に鮮明だが、その再定義とでもいおうか。バンブー風のパネル装飾も面白い。愉快なことに、リンゴット(フィアットの工場跡地)のテストコースをデザインモチーフにした楕円が採用され、そこにはなんと初代パンダのミニチュアが走っている! このあたりの遊び心は、さすがイタリア車だ。
日本でも話題を呼びそうな「大きな」パンダ。いまのところマニュアルギアボックス搭載グレードの予定はなさそうで、その時点で我が家の次世代機としての検討からは外れてしまう。けれども、パンディーノがしばらくあるというなら我慢しようと思っている。