イタリア車に精通する西川氏の最近のトピックスは「ワンミラー初期型テスタロッサ」のレストア完了。ペイントやレザーなどは、できるだけオリジナルを残しつつ、機関部品はピカピカに仕上げ、消耗品は新品に交換。西川氏は「フェラーリはすべてのパーツが美しい」と語る
フェラーリが先か、イタリアが先か。「馬」のほうが先だ。スーパーカーブームがあったから。長じてかの国のクルマはもちろん、食文化やファッションにも興味を持った。きっかけは間違いなく、フェラーリやランボルギーニといった「スーパーカー」を生んだ国であったからだ。
将来フェラーリに乗る。心にそう決めたのは小学生5年のとき。実現したのは29歳で初馬は365BBだった。以来、何台か乗り継いだけれど、テスタロッサはデビューが免許取得年齢と近かったこともあり、子供のころの夢(BBはそうだった)とはまた違って、もっとリアルな憧れの存在だった。
つい最近、ワンミラー初期型テスタロッサのフルレストレーションが終わった。現在ナンバー取得に向けて作業中である。披露する写真は先日、とりあえず見た目が完成した時点で参加したいくつかのイベントにおけるものだ。
以前にもテスタロッサを所有したことがあった。20年くらい前で、365BBがレストアから戻らず、寂しさを埋めようと最終91年式の黒/赤テスタロッサを買った。まだ500万円くらいで買えた時代だ。そのテスタロッサを手放した後も心の中にはずっとセンターロックのワンミラー(イタリア語でモノスペッキオ)初期型への憧れが残っていた。そうこうしているうちネオクラの跳ね馬まで相場高騰が始まって焦り始めたころ、1台の売り物が出た。
86年式、走行10万kmの並行車。普通は手を出さない。そこまで走っているという事実に賭けた。内外装はレストアすればいい。実際、エンジンの状態は意外によかった。ペイントやレザーなど、できるだけオリジナルを残した。機関部品はピカピカで、消耗品はもちろん総取っ替えだ。
フェラーリのレストア作業は見ていても楽しい。すべてのパーツが美しく、組み上がって見えなくなるのが惜しいくらい。いくつかレストア途中の写真を混ぜておいた。「外からは見えない美しさ」を楽しんでいただければと思う。
【西川 淳さん プロフィール】
にしかわじゅん/奈良県生まれ。クルマを歴史、文化面から技術面まで俯瞰して眺めることを理想とする自動車ライター。大学では精密機械工学部を専攻。輸入車やクラシックカーなど趣味の領域が得意ジャンル。イタリアはスーパーカーを入口にすべてに精通。AJAJ会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員