竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】スズキ・スペーシアギア「ほしい装備はすべて標準。室内アレンジ抜群」(2025年2月号)

スズキの軽ハイトワゴン、スペーシアが2023年11月に現行型(3代目)にフルモデルチェンジを実施。その約10カ月後に、SUVテイストのデザインを盛り込んだスペーシア・ギアが追加設定された。スペーシアと比べて何が違うのか、そして今回試乗したターボとNAではどう走りが異なるのか。そのあたりを中心にレポートしていこう。

装備充実、室内のアレンジ性抜群。細やかな配慮がうれしい

 もはや「SUVじゃないと売れない」とまでいわれたりするほどSUV人気が続いていると、やはりみんなと同じはちょっとイヤ、ヒトとは違うものがほしいというニーズが、当然のごとく出てきます。そんな個性派たちが加速して、クロスオーバーモデルというものが出現します。その先に今度はSUVではないクルマのSUV化が始まるわけです。

 軽自動車の世界にも昔からSUVは当然のこと、クロスカントリーモデルまで存在していたりしますが、近年の軽自動車のメイン市場はスーパーハイトワゴン。となると、もうおわかりですよね。スーパーハイトワゴンのSUV化が始まるわけです。そしてその1台が今回のスペーシア・ギアなんです。

 その名のとおり、ベースとなっているのは、2023年11月にデビューした3代目スペーシア・カスタム。そこから10カ月後の2024年9月にスペーシア・ギアが登場するわけですが、発売後2カ月でスペーシア全体の約2割がスペーシア・ギアを選んでいるといいますから、その人気ぶりがうかがえます。

 そう聞くと気になるのは、オリジナルのスペーシア・カスタムとの違いですよね。まずエクステリアでパッと目につくのは、ジムニーを彷彿とさせる、丸いお目目と5スロットメッキグリル。カワイサと逞しさが共存している感じがたまらない、という方も多いことでしょう。そして、ルーフレール。ギア=道具として使えることを前提に開発されていますから、ルーフラックに荷物を積むなんていうことを前提にしての設定なのでしょうが、見た目の雰囲気が大きく変わります。

 他にはオレンジの差し色があちこち目に映ります。「GEAR」のエンブレムをボディサイド下方にあしらったりするのは、スズキ車としては初めての試みだそう。さらにリアのエンブレムを横から見ると、オレンジが差し込んだ手の込みようがわかります。

 そのオレンジはインテリアにも盛り込まれていて、エアコン吹き出し口のところにちょこんとあしらわれています。こういう細かいポイント、想像以上に心に刺さるんですよね。

 そのオレンジとマッチングのいいカーキ色がメインで使われているのですが、この色の組み合わせを見て1980年中盤ごろに大流行したMA-1という軍用ジャケットを思い出したのは私だけでしょうか。何を隠そう、私も持ってましたが(笑)……。

 さて、話を元に戻して他の装備ですが、実は元々のスペーシア・カスタムが、SUV化したときに「あったらいいな」と思ったものを結構備えているんです。たとえばシートヒーター&ステアリングヒーターは、アウトドアにお出かけするにはかなりお役立ちですし、シートアレンジの多様性はいうまでもないですよね。

 とくに助手席が前倒しできて長尺物が積めるという広い空間は、何かと荷物が多くなるアウトドアレジャーにはピッタリです。さらに、そんなシーンではどうしてもラフに使わざるを得ないことも考慮して、ラゲッジルームや後部座席の背もたれの後ろ側が、お掃除簡単ワイパブル仕様になっています。これは実際かなり助かる仕様だと思うんですよね。

 また、荷物を積むのと反対方向、シートを寝かせる方向でのほぼフラットシートアレンジができるのも美点です。たとえば、渋滞を考慮してお出かけしたら目的地に早く到着してしまったので、ちょっと仮眠を取ろうかな~という場合とか、あるいは昼間遊び疲れたのでお昼寝するなんていうのもアリですし、そもそもアウトドアでの基地、ちょっとしたお休み&くつろぎスポットとしてはもってこいのスペースになるんです。

 加えて言うまでもなく日常使いや、レジャースポットまでのドライブでは、現行モデルの目玉のひとつ、マルチユースフラップがお役立ちです。座面ヘッドレストのようなこの装備、後部座席の前端を伸ばして座面延長できたり、傾けてオットマン仕様にしたり、あるいは座面前端を起こして荷物落下防止に使えたりします。さらにスリムサーキュレーターの搭載による万全な空調環境、フルに装備されている安全装備と合わせ……つまりもうズバリいっちゃいましょう! オリジナルのスペーシア・カスタムにあってスペーシア・ギアにないものが見当たらないんです。

 唯一違うのはタイヤの設定。スペーシア・カスタムのターボとNAの上位モデルは15インチですが、ギアはすべて14インチです。これはタイヤ自体の高さ、ハイトを稼ぎたかったからという、アウトドア車らしい理由からの設定ですが、だからといって高速でタイヤがねじれるといった感覚もないですし、かえって乗り心地のよさで美点となっている気がします。

 たくさん荷物を積むことも想定されるので、パワフルなターボモデルをチョイスされる方も多いと思いますが、走りに余裕が出ますし、安心してチョイスしてください。まとめますと、ベースモデルからのプラス要素しかない! これがヒットの真相といえそうです。

スペーシア・ギア「ヒットの真相」

1)アウトドアに似合うアクティブ感を内外装で表現し、ベースモデルとは異なる雰囲気を演出。SUV派ではなくても見た目で選んでOK

2)シートヒーターやステアリングヒーター、汚れに強い防汚タイプのラゲッジフロアなどスペーシアギア専用のアイテムを装備

3)ベースモデルの使い勝手のよさはそのままに、プラスの価値を満載。マイルドハイブリッド+ターボは加速力に優れ走りに余裕あり

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