竹岡さんは北海道で2024年7月に開催されたXCRラリーカムイから「モモ//トン」と名付けたトライトンで参戦を開始。初挑戦ながらクラス3位に食い込み、トライトンのポテンシャルの高さを印象づけた。続く同年9月のラリー北海道ではクラス4位でフィニッシュ。2025年はXCRスプリントカップ北海道シリーズに参加する予定
九島辰也さん(以下九島) 竹岡さんはトライトンでラリー活動をされていますが、そのきっかけは?
竹岡圭さん(以下竹岡) 「トライトンでラリーに出たい」と思ったのは、2023年7月、タイで行われたトライトンの国際発表会でした。発表会は「トライトン・ワールド」と銘打たれ、さまざまな「働くクルマ」から、ラリーカー、車高の低いSUVモデルまで、トライトンの世界観を表現した多くのモデルが展示されていました。それを見て、トライトンに対する三菱の本気度、そしてポテンシャルの高さを実感したんです。もともと三菱車でラリーを戦いたかったので「これだ!」と思いました。そこで思わず、現地入りしていた社長や副社長に直訴しちゃいました(笑)。2021年と2022年にFJクルーザーでラリーに出場し、「クロスカントリー車のラリーはいいな」、って考えていたことも、トライトンに惹かれた理由のひとつです。
九島 発表会でひと目惚れしたわけですね。実際にトライトンに乗ってみていかがでしたか?
竹岡 正式発表前に、北海道のグラベル・テストコースでノーマル車をドライビングする機会に恵まれました。予想以上に扱いやすく、エンジンも手応えがあり「これならいける!」と思いましたね。
九島 トライトンのラリー初戦は、2024年7月の「ラリー・カムイ」でしたよね。それまでにどんな準備をしました?
竹岡 マシンはほぼノーマル状態です。足回りとブレーキ、ホイールとタイヤを交換、ロールケージを入れた程度。これで全日本ラリーを十分に戦えるのですから、トライトンは凄いクルマです。実はパーツが届かなくてマシン制作が進められず、最後はメカニックさんが徹夜作業してくれて、ギリギリスタートラインに立てた感じです。苫小牧の港からラリー会場までが初乗り(笑)。アクセルを全開にしたのはラリー本番のSS1でした。初戦ながら安定して走れて安心しました。
九島 シェイクダウンなしでいきなり本番です
竹岡 「ラリー北海道」はカムイと比較して競技区間が長く、しかも「魔物が棲む」といわれる特別なイベントです。最長SSは25kmもの距離があります。そこでトライトンは本領発揮してくれて、長いSSでは1分前にスタートした前走車に追いついてしまうほど、コーナリングの速さと安定感は印象的でした。しかもトライトンには何か絶大な信頼感を感じるんですよね。アバルトやアルファロメオでラリーに参戦していたときは、スタート前に相当緊張しましたが、トライトンだと「この子と一緒に戦う」というワクワクしかないんです。ライバルのランクルやハイラックスに負けないぞ! という気力が自然に湧いてきます。走行中に走行モードがダイヤルで調節できるのも魅力。三菱は「パリダカ」や「WRC」で頂点を極めたメーカーですし、三菱の4WDは凄いと改めて実感しています。
九島 周囲の反響はいかがですか? サービスパークでは目立っていたと思いますが。
竹岡 私のトライトンはピンクのカラーリングなので「モモ//トン」の愛称をつけたのですが、人気は上々。多くの人が声をかけてくれます。最も感激したのは「三菱を、またラリー会場に連れてきてくれてありがとう」という言葉でした。三菱はラリー界のレジェンドです。でもここしばらくは実戦から遠ざかっていました。トライトンは久々の三菱のニューマシン、ファンは三菱の復活を待っていたんですね。2025年の計画は未定ですが、XCRスプリントカップ北海道に出場したいなと思っています。将来は海外ラリーへの挑戦もしたいなと。トライトンの高い戦闘力に触れ、夢は広がるばかり。すごく楽しみです。
「圭rally project 」とは
圭rally projectは、竹岡圭さん自身が立ち上げたラリーチーム。「いつもチャレンジの心を忘れず!」がスローガン。ラリーを選んだのは、「ラリーは自分自身とコースの真剣勝負、参加者は皆仲良しで、観客とも近い。地域振興にも貢献できるから」と説明してくれた。全日本戦には2017年から挑戦。「モモ//トン」はトーヨータイヤのOpen Countryとレイズ製アルミを装着。テイン製足回りとVITESSEブレーキキャリパーなどでライトチューン。エンジン関係はノーマル
くしまたつや/モータージャーナリスト。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『Car Ex』副編集長、『American SUV』編集長など自動車専門誌の他、メンズ誌、機内誌、サーフィンやゴルフメディアで編集長を経験。趣味はクラシックカーと四駆カスタム
たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員