ジムニー ノマド。ノマドは発表4日で約5万台の注文が殺到。現在は受注停止状態。全長をシエラ比で340mm拡大しユーティリティと優れた5ドアモデル。ノマドはジムニーならではのコンパクトさと、タフな4WD性能をそのままに、ファーストカーとしても十分な広い室内を実現。エンジンは1.5リッター直4(102ps)を搭載。トランスミッションは5速MTと4速ATが選べる。駆動方式は副変速機付きのパートタイム4WD。ボディサイズは 3820×1645×1720mm
山本 ところで2025年は、どんなモデルに注目が集まりそうでしょうか?
竹岡 それは、ジムニーの5ドア版、ノマドでしょう。デビューして6年目の3ドアの現行ジムニーでも、いまなお納車は1年待ち。ノマドだと3年待ちといったことになるかもしれません。なにしろ発表から僅か4日で5万台もの注文を獲得し、早くも受注を中止してしまったほどです。すでにインドでデビューしていますが、ジムニーの魅力であるコンパクトさ、圧倒的なタフさをそのままに、ユーティリティをグッと引き上げ、しかもスタイリッシュですから人気が爆発することは間違いなし。価格も手が届く範囲です。
岡本 メーカーは5ドアの導入について、「3ドアの納車状況が落ち着いたら考える」としてきました。そのメドが立ったということでしょうか。ボクの周囲にもジムニーの5ドアは絶対にほしいという人はたくさんいます。
山本 ところで2023年末は、BEVの話題を多く聞きました。現在は日本でもBEVに逆風が吹きはじめたという印象です。でも2025年はVWのID.BUZZがデビューするなど、多様化が一気に広がる気配もあります。いかがでしょうか。
九島 BEVの完成度はどんどん上がっています。MINIクーパーはもちろん、BEV専用モデルのエースマンは実に魅力的です。2025年にはJCWモデルも追加されます。新世代のポルシェ・マカンもいいクルマに仕上がっていると思います。市場はBEVに厳しいことは確かですが、続々とデビューする新型BEVは軒並み完成度が高そうです。
竹岡 BEVは使い方が、従来のエンジン車より制限される面もありますが、魅力的な側面が多いのも事実です。移動できる充電池として頼りになりますし。私は複数所有なら、1台はBEVにするのもアリだと感じています。
池田 BEVを所有するには、日本の場合、自宅で充電が可能な一戸建てに住んでいることが条件になります。家の近くに充電施設があったにしてもマンション住まいや、月極駐車場を利用している場合は辛い。クルマの完成度が高まっていることは確かですが、インフラがまだ整っていない、という印象です。ただし日本でもKカーの日産サクラのように、近所使いの場合はBEVがベターなことは立証済み。BEVはもう少し長いスパンで見ていくことが必要な気がします。ちなみに最近は、走行価値よりも「近付いたらドアが開き、自動的にシステムが起動、音もなくスムーズに走るクルマ」こそが魅力的、という体験価値に重きをおく新感覚ユーザーも増えています。そんな人は最新のBEVと親和性が高いと感じます。
竹岡 先日、生まれたときから家のクルマはリーフ。免許取得時に教習所で初めてエンジン車に触れたという若者と話す機会がありました。彼は「エンジン車はうるさくてスムーズではないから嫌い」といっていました。クルマの原体験で、さまざまな価値観のユーザーが生まれていると感じます。
岡本 最近、「BYDはどうですか?」と聞かれる機会が増えています。確かにBEVに逆風が吹いていますが、BYDに興味を持つ人は確実に増えていると思います。「アリかも、BYD!」という長澤まさみさんを起用したCMの効果も高いのでしょう。あのCMの表現は本社サイドではNGだったそうですが、好感度No.1のCMに輝きました。BYDはクルマ自体の完成度も高い。また最近は高速道路の充電施設もグッと充実してきています。ボクはBEV推進派ではありませんが、BEVの本質的な価値はドライバビリティの高さにあると感じています。日本ではまだまだBEV未体験が多数派。まずはディーラーでBEVに試乗してみることをお勧めします。
竹岡 BYDはBEVだけでなくPHEVの導入する方向ですね。またヒョンデもいよいよディーラー展開をスタートさせるという噂も。楽しみですね
山本 ところで最近、クルマ選びの尺度が変化している気がしています。従来は同じクラスのライバルと比較していましたが、いまはもっと自由になっている。この点は、いかがでしょうか。
池田 確かにそうですね。クルマ選びのメッシュが粗くなったというのでしょうか。たとえば「普段使いのちっちゃいクルマ」という条件だと、ヤリスなどのBセグメントはもちろん、ヴェゼルのようなCセグメント車、さらにはKカーまで含めて検討している。もちろんクルマのキャラクターもHB、SUV、ハイトワゴンと色々。その中で自分にぴったりのクルマを選ぶのが、最近の傾向といえるでしょう。
山本 確かにそうですね。価格的にも、さまざまなモデルで拮抗しています。デリカミニの見積もりは、フリードやWR-Vとほぼ同額でした。
竹岡 私の知人はコペンとMINIを比較していました。
九島 アウディA4カブリオレとBMW5シリーズ・ツーリングで悩んでいた友人がいます。自由なクルマ選びが広がっていますね。今年のCOTYは車種のバラエティに富んでいました。3ドアHBからピックアップトラックまで揃い、パワーソースも多種多様。まさに「いまという時代」を象徴していたと思います。クルマにとって現在は過渡期。だからこそ楽しい時代なのだと思います。
池田 若い人はコスパがなにより大切で、クルマ選びで失敗したくない、というケースが主流ですが、むしろ、失敗を楽しんでもらいたい。これだけバラエティに富んだクルマが揃っているのです。大いにチャレンジしなければ損ですよ。
山本 そういえば、先日、シビックRSを選ぶのは若い人中心というデータを見てびっくりしました。若い層もクルマ好きは多いですよね。
竹岡 クルマ好き世代の影響、親がクルマ好きだと息子さんや娘さんはクルマ好きに育っているようです。
九島 いまの時代に「ガソリンのMT」を用意してくれることは感動ですよね。スーパーカーも電動化の時代を迎え「1000ps」が新たな基準になってきました。そう考えると、クルマを楽しむのにいい時代なのかもしれないですね。
池田 私は、こんな時代だからこそ、いまでないと素晴らしさが味わえないクルマに乗ってほしいと考えています。昔、次期型のPA11プリメーラが登場するとわかっていて、初代のPAプリメーラを購入しました。欧州車フィールは初代の特権、いま堪能しておくべきと考えたからです。今日でいえば、マツダCX-5が乗る価値のあるクルマの筆頭ではないでしょうか。あの完成度は見事です。成功したクルマのラストモデルは、多くの歓びを与えてくれると思います。
九島 そういった文脈でいくと、すでに中古車の扱いになりますが、岡本さんが購入されたMINIクラブマンや、その前の3ドア・クラブマンも乗る価値があるクルマに入りますね。
山本 みなさん、話が尽きませんが2025年もクルマは元気ということですね。今年もたくさん魅力的なモデルが登場することでしょう。その情報をカー・アンド・ドライバーがしっかりお届けしたいと思います。今日はみなさん、ありがとうございました。
山本善隆_YAMAMOTO Yoshitaka
やまもとよしたか/本誌統括編集長。東京都生まれ。ITコンサルティング会社でシステム開発、自動車Webメディア編集部等を経て、企業の戦略立案・事業開発・マーケティング支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転している時間が一日の中で最も好き
九島辰也_KUSHIMA Tatsuya
くしまたつや/モータージャーナリスト。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『Car Ex』副編集長、『American SUV』編集長など自動車専門誌の他、メンズ誌、機内誌、サーフィンやゴルフメディアで編集長を経験。趣味はクラシックカーと四駆カスタム
池田直渡_IKEDA Naoto
いけだ なおと/自動車ジャーナリスト、自動車経済評論家。1965年 神奈川県生まれ。1988年ネコ・パブリッシング入社。2006年に退社後ビジネスニュースサイト編集長に就任。2008年に編集プロダクション、グラニテを設立。クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う
竹岡 圭_TAKEOKA Kei
たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
岡本幸一郎_OKAMOTO Kouichirou
おかもと こういちろう/モータージャーナリスト。1965年 富山県生まれ。幼少期にクルマに目覚め、小学校1年生で街を走るクルマの車名すべてを言い当てるほどになる。大学卒業後、自動車専門誌の編集などを経てフリーランスへ。AJAJ会員。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員