ボーフェンジーペン家が手がけるアルピナ最後のプロダクションモデル「B3 GT」「B4 GT」が日本上陸。今後のアルピナ社の事業展開は――

マイナーチェンジを図ったアルピナの高性能サルーン/ワゴンのB3 LIMOUSINE/B3 TOURINGと高性能4ドアクーペのB4 GRAN COUPÉが、車名にアルピナの中で最も理想的なモデルを表す“GT”の呼称を加えて日本上陸。アルピナ創業家のボーフェンジーペン家が手がける最後のプロダクションモデルは、3リットル直6ビターボエンジンの出力アップや機能装備のアップデートなどを実施。注目の今後のアルピナ社の事業展開も考察

 アルピナおよび日本総代理店のニコル・オートモビルズは、高性能サルーン/ワゴンのB3 LIMOUSINE/B3 TOURINGと高性能4ドアクーペのB4 GRAN COUPÉの進化モデル、「B3 GT LIMOUSINE ALLRAD(B3 GTリムジン・アルラッド)」「B3 GT TOURING ALLRAD(B3 GTツーリング・アルラッド)」「B4 GT GRAN COUPÉ ALLRAD(B4 GTグランクーペ・アルラッド)」を、日本のメディア向けの内覧会において披露した。

▲BMWアルピナB3 GT LIMOUSINE ALLRAD 価格:左ハンドル1650万円/右ハンドル1680万円

▲BMWアルピナB3 GT LIMOUSINE ALLRAD 価格:左ハンドル1650万円/右ハンドル1680万円

車両価格は以下の通り。

B3 GT LIMOUSINE ALLRAD:左ハンドル1650万円/右ハンドル1680万円

B3 GT TOURING ALLRAD:右ハンドル1720万円

B4 GT GRAN COUPÉ ALLRAD:左ハンドル1710万円/右ハンドル1750万円

なお、車両価格は昨今の原材料費や物流費等の高騰により、昨年6月の発表時点より50万円アップしている。

▲BMWアルピナB3 GT TOURING ALLRAD 価格:右ハンドル1720万円

▲BMWアルピナB3 GT TOURING ALLRAD 価格:右ハンドル1720万円

 3リットル直6ビターボエンジンの出力アップや機能装備のアップデートなどを図ったうえで、車名にアルピナの中で最も理想的なモデルを表す“GT”の呼称を加えた新型B3 GTおよびB4 GTは、現在のBMWアルピナの体制で開発・生産する最後のプロダクションモデルに位置する。アルピナ社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH&Co.KG)は今から60年前の1965年にブルカルト・ボーフェンジーペン(Burkard Bovensiepen)氏がドイツのバイエルン州カウフボイレン(1978年に社屋をブッフローエに移設)にて創業した、BMW車をベースとした独自開発のモデルを生産し、販売する自動車メーカーで、創業当時はBMW車に組み込む独自開発のダブルチョーク・ウェーバーキャブレター「ALPINAユニット」 を販売して好評を博し、同社の礎を築く。その後、BMW 社とのパートナーシップを通じて活動するようになり、1978年に登場したB6 2.8を皮切りにBMW車をベースとする“B+数字”のオリジナルモデルを開発・生産するようになった。1983年にはドイツ政府自動車局によって自動車製造業者として登録される。しかし、2022年3月になるとアルピナ社はブランド商標権をBMW社に譲渡すると発表。ブルカルトの息子であるアンドレアス・ボーフェンジーペン(Andreas Bovensiepen)氏やフロリアン・ボーフェンジーペン(Florian Bovensiepen)氏ら首脳陣が、アルピナの会社の規模では今後進む電動化や自動運転に対応できないと判断したことによる決定だった。結果的にアルピナ社は、2025年一杯で独自モデルの開発・生産を終了する予定である。

▲BMWアルピナB4 GT GRAN COUPÉ ALLRAD 価格:左ハンドル1710万円/右ハンドル1750万円

▲BMWアルピナB4 GT GRAN COUPÉ ALLRAD 価格:左ハンドル1710万円/右ハンドル1750万円

 改めて新型B3 GTおよびB4 GTの特徴を紹介していこう。

 まずパワートレインでは、ビターボ・チャージング・システム(ツインターボ・システム)を組み込んだS58型2992cc直列6気筒DOHCエンジンの改良を実施。アルピナのエンジニアが開発車両で数え切れないほどのベンチテストと実走行を行い、あらゆる走行状況において最大限のパフォーマンスを発揮できるよう独自のエンジンマッピングを見直す。結果として、最高出力は従来比34psアップの529ps(389kW)/6250~6500rpm、最大トルクは730Nm(74.4kg・m)/2500~4500rpmを実現した。また、エンジンコンパートメントにはシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着している。

 組み合わせるアルピナスウィッチトロニック付8速スポーツオートマチックトランスミッション(ZF8HP76)も、エンジンの出力向上に合わせてプログラムを変更。可変式の全輪駆動システムや電子制御式リアリミテッドスリップディファレンシャルとの組み合わせにより、増大したパワーを効率的にドライビングダイナミクスへと変換する。性能面では、B3 GT LIMOUSINEが0→100km/h加速3.4秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度308km/h(従来比+3km/h)を、B3 GT TOURINGが同3.5秒(-0.2秒)/305km/h(+3km/h)を、B4 GT GRAN COUPÉが同3.5秒(-0.2秒)/305km/h(+4km/h)を達成。また、燃料消費量はWLTP測定サイクルで9.52km/リットル、CO2排出量は239g/kmを成し遂げている。

 B3 GTのシャシー面については、ベースとなるBMW3シリーズのアップデートの恩恵を受け、リアダンパーとボディ結合部の剛性を高めるなどしてドライビングダイナミクスをさらに向上させる。エンジンフードを開けると目にすることができるアルピナのドームバルクヘッドレインフォースメントストラットは、フロントエンドの剛性をいっそう高めることに貢献。また、B3 GT Limousineにはより高いレートのリアスタビライザーを装着し、ロールのコントロール性とステアリングレスポンスの引き上げを果たした。

 一方、B4 GTではアジリティをより高めるためにシャシーとサスペンションを新たにセッアップする。フロントアクスルにはマウント部を強化した新しいスタビライザーを組み込み、動作の精度を向上。合わせて、可変スポーツステアリングとアクティブダイナミックダンピングコントロールのセットアップも変更し、さらにリア重視の完全可変の全輪駆動システムと電子制御式リミテッドスリップディファレンシャルのセッティングも見直して、さらなる鮮烈なドライビングエクスペリエンスの提供とハンドリングの正確性を実現した。シューズに関しては、B3 GTに前8.5J×20/後9.5J×20アルピナ・クラシック鍛造アルミホイール(オロ・テクニコ仕上げ、シルバーB3 GTレタリング付)+前255/30ZR20(92Y)XL/後265/30ZR20(94Y)XL ピレリP-ZERO(ALP)タイヤを、B4 GTに前8.5J×20/後10J×20アルピナ・クラシック鍛造アルミホイール(オロ・テクニコ仕上げ、シルバーB4 GTレタリング付)+前255/35ZR20(97Y)XL/後285/30ZR20(99Y)XL ピレリP-ZERO(ALP)タイヤを組み込んでいる。

▲BMWアルピナB3 GT LIMOUSINE ALLRAD 全長4725×全幅1827×全高1440mm ホイールベース2850mm 車重1840kg 0→100km/h加速3.4秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度308km/h(従来比+3km/h)

▲BMWアルピナB3 GT LIMOUSINE ALLRAD 全長4725×全幅1827×全高1440mm ホイールベース2850mm 車重1840kg 0→100km/h加速3.4秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度308km/h(従来比+3km/h)

▲モダナイズされた新世代のコクピットデザインを採用。改良型のBMW3シリーズとは異なり、センターコンソールにはクラシックなギアセレクターを引き続き配備する。B3 GT LIMOUSINEは右ハンドルと左ハンドルの選択が可能

▲モダナイズされた新世代のコクピットデザインを採用。改良型のBMW3シリーズとは異なり、センターコンソールにはクラシックなギアセレクターを引き続き配備する。B3 GT LIMOUSINEは右ハンドルと左ハンドルの選択が可能

▲“BMW ALPINA B3 GT Limousine”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着

▲“BMW ALPINA B3 GT Limousine”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着

▲最高級のレザーを張ったバケットタイプのシートを装備。ヘッドレスト部には“GT”ロゴを入れる

▲最高級のレザーを張ったバケットタイプのシートを装備。ヘッドレスト部には“GT”ロゴを入れる

▲ビターボ・チャージング・システム(ツインターボ・システム)を組み込んだS58型2992cc直列6気筒DOHCエンジンの改良を実施。最高出力は従来比34psアップの529ps(389kW)/6250~6500rpm、最大トルクは730Nm(74.4kg・m)/2500~4500rpmを発生。アルピナのドームバルクヘッドレインフォースメントストラットを配して、フロントエンドの剛性をいっそう高める

▲ビターボ・チャージング・システム(ツインターボ・システム)を組み込んだS58型2992cc直列6気筒DOHCエンジンの改良を実施。最高出力は従来比34psアップの529ps(389kW)/6250~6500rpm、最大トルクは730Nm(74.4kg・m)/2500~4500rpmを発生。アルピナのドームバルクヘッドレインフォースメントストラットを配して、フロントエンドの剛性をいっそう高める

▲エンジンコンパートメントには“BMW ALPINA B3 GT Limousine”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを配備

▲エンジンコンパートメントには“BMW ALPINA B3 GT Limousine”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを配備

 エクステリアについては、特別なGTモデルであることを明示する複数の特徴を取り入れた点がトピックだ。小さなカナードとスプリッターによってその存在が強調されるロゴ入りのフロントスポイラーは、新デザインのリアディフューザーと組み合わせることで、総合的なエアロダイナミクスのバランスを向上。また、リアディフューザーはブラックのハイグロス仕上げとし、テールパイプもブラックで仕上げて、精悍なルックスを創出する。合わせて、B4 GTは内部構造が一新された改良版BMW4シリーズのヘッドライトによって先進的な印象がアップ。さらに、リアに立体的なライトグラフィックを備えた新しいBMWライトデザインを採用して、より存在感あふれる後ろ姿を具現化した。オプションとして、モデル固有のGTレタリングが施されたオロ・テクニコ仕上げのクラシックなアルピナ・デコ・セットも用意している。

▲BMWアルピナB3 GT TOURING ALLRAD 全長4725×全幅1825×全高1450mm ホイールベース2850mm 車重1920kg 0→100km/h加速3.5秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度305km/h(従来比+3km/h)

▲BMWアルピナB3 GT TOURING ALLRAD 全長4725×全幅1825×全高1450mm ホイールベース2850mm 車重1920kg 0→100km/h加速3.5秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度305km/h(従来比+3km/h)

▲B3 GT TOURINGは右ハンドルのみを日本に導入。“BMW ALPINA B3 GT Touring”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着

▲B3 GT TOURINGは右ハンドルのみを日本に導入。“BMW ALPINA B3 GT Touring”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着

▲エンジンコンパートメントには“BMW ALPINA B3 GT Touring”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装備

▲エンジンコンパートメントには“BMW ALPINA B3 GT Touring”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装備

 内包するインテリアは、多くのディテールにGTのカラースキームであるオロ・テクニコを採用したことが訴求点。オロ・テクニコは最高級ラヴァリナレザー巻きステアリングホイールのステッチや、アルマイト処理されたアルミニウム製のアルピナスウィッチトロニックシフトパドル、そしてフロアマットとラゲッジコンパートメントマットのブラックレザーの縁取りステッチなどに施される。また、ドアシルトリムやステアリングホイールのスポーク部にはGTのレタリングを配した。一方、機能面についてはモダナイズされた新世代のコクピットデザインを採用。また、改良型のBMW3シリーズおよび4シリーズとは異なり、センターコンソールにはクラシックなギアセレクターを引き続き装備する。さらに、アルピナの慣例に従って、個別のシリアルナンバーを刻んだ専用プレートをセンターコンソールに装着した。

▲BMWアルピナB4 GT GRAN COUPÉ ALLRAD 全長4800×全幅1850×全高1440mm ホイールベース2855mm 車重1910kg 0→100km/h加速3.5秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度305km/h(従来比+4km/h)

▲BMWアルピナB4 GT GRAN COUPÉ ALLRAD 全長4800×全幅1850×全高1440mm ホイールベース2855mm 車重1910kg 0→100km/h加速3.5秒(従来比-0.2秒)/巡航最高速度305km/h(従来比+4km/h)

▲B4 GT GRAN COUPÉは右ハンドルと左ハンドルの選択が可能。“BMW ALPINA B4 GT Gran Coupe”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着

▲B4 GT GRAN COUPÉは右ハンドルと左ハンドルの選択が可能。“BMW ALPINA B4 GT Gran Coupe”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを装着

▲エンジンコンパートメントには“BMW ALPINA B4 GT Gran Coupe”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを設定

▲エンジンコンパートメントには“BMW ALPINA B4 GT Gran Coupe”ロゴとシリアルナンバーを刻印した専用プレートを設定

 B3 GTおよびB4 GTの日本上陸に際し、アンドレアス・ボーフェンジーペン氏がビデオメッセージを届ける。

まず、「本日は単なるNew BMW ALPINA B3 GTおよびB4 GTモデルの発表にとどまらず、ALPINAと日本との間で築かれてきた長い歴史、情熱、そして共通の熱意を祝う日でもあります」とコメント。

続けて、「この46年間、ALPINAブランドの日本での成功はまさに目覚ましいものでした。そして現在、BMW ALPINA車への需要はこれまでにないほど高まっています。実際、日本におけるALPINA車の受注は記録的なものとなっており、これはこの市場においてALPINA車が愛され、賞賛され続けていることの証しです。日本は私たちにとって最も重要な地域のひとつであることは間違いなく、私たちのクルマが日本のエンスージアストたちの心に強く響いていることを誇りに思います」と、日本市場への賛辞を贈る。

そして、B3 GTおよびB4 GTについて「2026年よりALPINAの名前とブランドはブッフローエを離れ、BMWグループの一部となります。ブッフローエで過去60年にわたって成し遂げてきた素晴らしい業績を称え、私たちは、最後の特別モデルセットでその豊かな歴史に敬意を表したいと考えました。それがBMW ALPINA B3 GTとB4 GTです」

「3シリーズは、ALPINAのラインアップの中でも常に基盤となるモデルです。間違いなく、私たちにとって最も重要なモデルであり、日本の皆様に最も人気のあるモデルです。ALPINAと3シリーズの関係は、精度、パフォーマンス、洗練さに対する共通のこだわりによって定義された、非常に特別なものです。B3 GTおよびB4 GTは、ALPINAが誇る最高の魅力を体現したモデルです」

「これらのモデルは、コンパクトでエレガント、かつダイナミックです。新しいスタイリング要素が加わり、フレッシュでモダンな印象を与えつつも、ALPINAを特徴づけてきた不朽の魅力を保っています。さらなるパワー、強化されたパフォーマンス、そしてALPINAの象徴である洗練されたドライビングエクスペリエンス――。新しいモデルは単なるクルマではなく、過去60年間にわたって私たちが築き上げてきたすべての集大成であり、皆さまの心に残るものになると確信しています」と、そのキャラクターを紹介。

さらに、「他の特別限定モデルとともに、B3 GTおよびB4 GTは、今年9月にドイツで開催されるALPINAの60周年記念イベントにおいて、過去の象徴的かつ歴史的なALPINAモデルとともに展示され、ALPINAの過去、現在、そして未来を祝います。私たちは、ブッフローエで面白いプロジェクトが形を成していくエキサイティングな未来を心から楽しみにしています」と、将来展望を示唆した。

▲B3 GTおよびB4 GTの日本上陸に際し、アンドレアス・ボーフェンジーペン氏がビデオメッセージでコメント

▲B3 GTおよびB4 GTの日本上陸に際し、アンドレアス・ボーフェンジーペン氏がビデオメッセージでコメント

 なお、アルピナ社は2026年以降、ボーフェンジーペン(BOVENSIEPEN)社の社名を冠し、クラシックカー関連事業への投資や、これまでと異なる新しいモビリティの開発に挑戦していくと予告している。近年では、旧車を現代の技術で蘇らせるとともに新しいカスタム手法を取り入れた、高品質なレストア&モディファイ“レストモッド”が世界中で注目を集めている。アルピナ社の高い技術力と開発・生産能力がボーフェンジーペン社に継承されれば、高度なエンジニアリングに精巧な仕上げを実現した、世界中のクルマ好きを魅了する至極のレストモッド車(往年のBMW車がベースか!?)が誕生することは確実だろう。その際はニコル・オートモビルズを通じて、日本に導入されることも予想される。とにかく、今後のボーフェンジーペン社の事業展開に、期待を込めて注目していきたい。

▲アルピナ社はブランド商標権をBMW社に譲渡すると発表。2026年以降はボーフェンジーペン(BOVENSIEPEN)社の社名を冠し、クラシックカー関連事業への投資や、これまでと異なる新しいモビリティの開発に挑戦していく予定

▲アルピナ社はブランド商標権をBMW社に譲渡すると発表。2026年以降はボーフェンジーペン(BOVENSIEPEN)社の社名を冠し、クラシックカー関連事業への投資や、これまでと異なる新しいモビリティの開発に挑戦していく予定

 

 

SNSでフォローする