【最新モデル試乗】BMWの大黒柱、最新X3は上質感満点。緻密な作り込みと意のままの走りにプレミアムを実感する!

BMW X3 20d xDrive M Sport/価格:8SAT 858万円。各部の造形はBMWの最新デザイン言語で統一。大型のキドニーグリルとキリッとしたヘッドランプが印象的。マッシブなフォルムは強い存在感を主張する。ボディサイズは4755×1920×1660㎜とやや大柄

BMW X3 20d xDrive M Sport/価格:8SAT 858万円。各部の造形はBMWの最新デザイン言語で統一。大型のキドニーグリルとキリッとしたヘッドランプが印象的。マッシブなフォルムは強い存在感を主張する。ボディサイズは4755×1920×1660㎜とやや大柄

最新X3は斬新デザインで存在感を主張。3種の48VマイルドHVを搭載

 X3は、2003年の初代デビュー以来、累計で350万台以上を販売してきたBMWの主力である。
 彼らのアニュアルレポートには、ベースモデルとそのクーペ版の合計という形で各車種の販売台数が毎年公表されているが、それによると、X3とそのクーペ版、X4は2023年に合計40万5562台を販売した。

 これはBMW全体で見たとき、3シリーズと4シリーズの合計55万8462台に次ぐ規模で、全車種に占める比率は実に18%に上る。BMWの大黒柱といって間違いない。

 X3のセールスにひと役買っているのが日本市場だ。その販売ボリュームはアメリカ、ドイツ、イタリアに次ぐ第4位に相当する。

リアスタイル

 そんなX3がフルモデルチェンジを受けたのは昨年6月のこと。それから半年余りを経て、キーとなる市場のひとつ、日本でも販売がスタートした。

 日本仕様は2リッターターボ(190㎰/310Nm)の20 xDrive xライン(798万円)、2リッター・ディーゼルターボ(197㎰/400Nm)の20d xDrive Mスポーツ(858万円)、そしてストレート6を唯一搭載する3リッターターボ(381㎰/540Nm)のM50 xDrive(998万円)。3モデルとも48Vマイルドハイブリッド・システムを搭載していることがニュースだ。

 ボディサイズは4755×1920×1660㎜。全長が35㎜、全幅が30㎜拡大されたが、それ以上に注目されるのがデザインの変貌ぶりだ。まずはキドニーグリルが強烈な存在感を放つ大きな縦型に改められるとともに、ヘッドライトは目元がキリリと引き締まったタイプに一新。ボディサイドに目を転ずれば、柔らかな印象のプレスラインが曲線を描きながら上昇していくデザインとされた。シャープなキャラクターラインが水平に伸びていた先代までとは明らかに異なる。

イメージ

インパネ

 新型の造形はコンセプトカーのiXで初めて紹介されたBMWの最新デザイン言語に基づいている。
 インテリアの変貌ぶりも鮮烈である。メーターディスプレイとセンターディスプレイを一体化するとともに、視認性を高めるためにこれらを湾曲してレイアウトしたBMW自慢のカーブドディスプレイを採用。表示されるグラフィックデザインも個性的だが、ダッシュボード回りの物理スイッチを極力減らすとともに、エアコン吹き出し口のサイズを極小化してスッキリとした印象を生み出している。また、幅広のアンビエントライトにはクリスタルを思わせる装飾を施し、それ自体をデザイン上のアクセントとして用いるアイデアも斬新である。

一段とピュアなドライバーズカーに成長。プレミアムを実感

 見た目は大胆に生まれ変わった新型X3は、実際にステアリングを握っても、実にBMWらしく、ストレートな進化を遂げていることに気づく。

 試乗したのは4気筒ディーゼルを積む20d。ディーゼルといえば、始動時にエンジンが「ブルブルブルッ!」と大きく身震いすることですぐに気づくものだが、20dはマイルドハイブリッド・システムの高回転・高出力モーターで始動する。

 その結果、ノイズや振動を感じることなく、何ごともなかったかのようにエンジンがアイドリングを始める点が好ましい。そして走行中は、スロットルレスポンスの遅れを電気モーターが補ってくれるため、ディーゼル特有の振る舞いはゼロに等しい。

走り

エンジン

 軽く乾いたエンジン音、素早い回転の立ち上がりも、ディーゼルとは思えないポイントだ。パフォーマンスは実に素晴らしい。
 静かなのはエンジンだけではない。ロードノイズも同様だ。サスペンション・セッティングも見事というほかない。X3はタイヤの当たりがソフトで、ゴツゴツとした印象が薄い快適な乗り心地を実現しながら、ロールやピッチといったボディの無駄な動きを徹底的に排除している。

 私が20dで最も強く感銘を受けたのは、ドライバーが行った操作に対する反応がすべて素直なうえに、リニアリティが高い点だった。ステアリングを切ったとき、もしくはスロットルペダルやブレーキペダルを踏み込んだとき、それらの操作量と、操作量に対するクルマの反応がつねに1対1の関係にある。

真横

前シート

 その結果、ドライバーはクルマの動きを正確に予想しながら、思いのままに操ることができるのだ。これは簡単なようでいて、なかなか実現できないパフォーマンスである。

 たとえば、スロットルペダルを踏み込んだ瞬間にエンジンがかすかにでも息つきをすれば、ドライバーの期待は裏切られてしまう。サスペンションの動き始めでダンパーが適切な減衰力を発生できなければ、クルマの動きはギクシャクしたものになる。こうした細かな部分まで入念な熟成を施してこそ、初めてドライバーが意のままに操れるクルマが完成するのだ。しかも、そうしたクルマは挙動が緻密にコントロールされているため、乗り心地が上質になるという副産物も手に入る。これこそプレミアムカーの真髄というものだろう。

 新型X3は、BMWが掲げる「駆け抜ける歓び」を実現するために欠くことのできないプロセスを丁寧に実践した。最高のドライバーズSUVに仕上がっている。

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