スズキ・フロンクス/価格:6SAT 254万1000円(FF)/273万9000円(4WD)。フロンクスは日本ではスズキの上級車というポジショニング。クーペフォルムのスタイリッシュな造形とナビまで標準の充実装備、そしてリーズナブルな価格が魅力。写真の2トーンカラーはop(8万8000円)
フロンクスは、スズキのワールドモデル。インド工場で生産され日本には輸入車として上陸する。魅力はクーペフォルムの造形と、ナビまで標準の充実装備、そして抜群のコストパフォーマンスである。2024年秋の発売後、瞬く間に人気者となった。ラインアップは1.5リッター・MHEVのモノグレードで、FFと4WDが選べる。4WDは日本専用である。
スタイリングは個性的。既存のスズキ車との関連性はなく、他の何かにも似ていない。ダイナミックな造形は印象的で、バックシャンでもある。デザインはヨーロッパをイメージしながら日本で練り、インドで仕上げたそうだ。最近は意識的にシンプルに仕上げるクルマが多い中、隙間なく何かを詰め込んだ外観は、存在感がある。全長が4mを切っているとはとても思えない。
クーペスタイルとはいえ実用性に配慮されているのもうれしい。後席も含め室内空間と荷室は十分に広く、快適装備も充実している。ブラック×ボルドーのちょっと渋めの2トーンの室内色は、落ちついた中にも華やかさがある。前席シートヒーター、リアヒーターダクト、ドアミラーヒーター、ラゲッジボードは日本専用アイテムという。
自然吸気の1.5リッター直4エンジン(FF:101ps/4WD:99ps)と6速トルコンATという、いまとなっては貴重な組み合わせのパワートレーンは、市街地ではマイルドハイブリッドのメリットを感じる。発進や再加速時にISG(モーター)がいい仕事をして、フラットなトルク特性のエンジンとあいまって、とても扱いやすい。
エンジンが4気筒で、CVTではなくトルコンATというのも好印象。運転好きなら共感する人も多いだろう。スポーツモードを選択すると3000rpm以上を積極的に使う制御に変化する。使いやすいパドルシフトとともに、走りを楽しみたい気分のときにドライバーの思いに応えてくれる。
静粛性はハイレベル。パワートレーン系の音は多少車内に伝わってくるが、車外から侵入する音はよく抑えられている。同乗者と会話を楽しみながらドライブできる。
足回りの開発は日本のテストコースを主体に行い、それをインドで反映させたとのこと。方向性としては、海外向けがスピードバンプなどを含めさまざまな路面に配慮しているのに対し、路面のきれいな日本では、よりフラットで運動性能を味わえるように調整されている。車体剛性は高く、路面をしっかり捉える走り味は骨太な印象。公道で乗るとFFのキビキビとした軽快さが4WD以上に心地よく感じられた。
取り回し性は最上レベル。全幅は1765mmあるが、最小回転半径は4.8mと小回りがきく。狭い道も苦にしない点は日常生活で重宝しそうだ。
先進運転支援装備は盛りだくさん。このクラスでこれ以上はないほど充実している。ブレーキホールドや全方位モニターも標準装備され、スズキコネクトにも対応している。4WDは冬道に対応するデバイスや走行モードが搭載されている点もプラスポイントである。
フロンクスは、本気で日本市場を意識して作り込まれている。しかもコスパが抜群に高い。スズキが送り込んだ剣客は、相当の実力派だ。