アストンマーティンがV12スポーツカーのフラッグシップモデルのヴァンキッシュにコンバーチブルモデルの「ヴァンキッシュ ヴォランテ」を設定。コクピット回りを入念に強化したうえで、ルーフに14秒でオープン、16秒でクローズする軽量なソフトトップを採用。パワートレインはクーペと共通で、835ps/1000Nmを発生する5.2L・V12ツインターボエンジンを搭載。生産はクーペと合わせて年間1000台以下の限定で、デリバリーは本年第3四半期に開始予定
英国アストンマーティンは2025年3月25日(現地時間)、同ブランドの新世代フラッグシップスポーツカーである「ヴァンキッシュ(Vanquish)」のオープントップモデルとなる新型「ヴァンキッシュ ヴォランテ(Vanquish Volante)」を発表。翌3月26日には、アストンマーティン ジャパンがヴァンキッシュ ヴォランテの実車を日本で初披露した。
▲アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ 全長4850×全幅2044×全高1296mm ホイールベース2885mm 乾燥重量2005kg 乗車定員2名 生産はクーペのヴァンキッシュと合わせて年間1000台以下の限定で、デリバリーは本年第3四半期に開始予定
現行のヴァンキッシュは2001年デビューの初代、2012年デビューの2代目に続く第3世代の高級パフォーマンスGTとして2024年9月にデビュー。今回発表されたヴァンキッシュ ヴォランテは、そのオープントップモデルとなる新しいフラッグシップコンバーチブルに位置する。
注目のオープントップは、Kホールドで格納するとともにスタックハイトを260mmに抑えた電動ファブリック製ルーフを採用する。ルーフはオープンが14秒、クローズが16秒で完了し、また約50km/h以下の速度域であれば走行中の開閉も可能。クルマの半径2m以内では、キーを介してのリモート開閉も実行できる。格納したルーフは、空力特性を高めるダブルバブルを配したトノカバーに覆われる仕組みだ。また、ルーフ自体は遮音性および断熱性を重視した8層構造で構成し、ルーフを閉じた際の騒音レベルと車室温度はクーペと遜色のないレベルに仕上げている。流麗なボディラインを損なわないルーフ形状に仕立てたことも訴求点。安全装備として、ロールオーバープロテクションシステム(ROPS)も組み込んでいる。
▲オープントップはKホールドで格納するとともにスタックハイトを260mmに抑えた電動ファブリック製ルーフを採用する。ルーフはオープンが14秒、クローズが16秒で完了し、また約50km/h以下の速度域であれば走行中の開閉も可能
エクステリアについては、カーボンファイバー材を多用したロングノーズ&ショートデッキの2ドアコンバーチブルボディを基調に、オープン化に合わせてAピラーやドアシル、リアボディ、アンダーボディなどコクピット回りを入念に強化する。各部のアレンジにもこだわり、フロント部はV12エンジンに空気を送り込み、独特な潮流のような凹型のフォルムで仕立てたフロントグリルやサーモルバーを配したボンネット、統合型スプリッターを備えたワイドバンパー、そして6ブロックのデザインパターンを配したDRL付マトリクスLEDヘッドライトなどを採用してアグレッシブなマスクを創出。一方でサイドビューは、Aピラーとフロントアクスル間の延長によるロングノーズや彫刻のように形作られたインフィルパネルに収められるV12刻印入りのサイドストレーキ、折り重なったセクションによって筋肉質なフォルムを強調したフェンダーおよびドアライン、開放感満点の上部のオープンボディなどによって、ドラマチックなフォルムを実現する。フレームレスのドアミラーや自動で開くドアハンドルを配して空力特性を高めたこともトピックだ。そしてリアセクションは、フロントグリルを反映した7本のライトブレードやシールドをあしらったカムテール、中央と外側にブレードを備えた攻撃的なディフューザー、四角形と円形を組み合わせたエッジを持つ4本の排気管などを採用して、スポーティかつ印象的な後ろ姿を演出する。ボディサイズは全長4850×全幅2044×全高1296mm/ホイールベース2885mmに設定。車重はクーペ比で95kgほど重い2005kg(EU Certified Unladen Mass)で、前後重量配分49:51に仕立てた。
2シーター構成のインテリアに関しては、最高級のラグジュアリーと革新の頂点に立つヴァンキッシュ ヴォランテならではの演出を施したことが特徴である。コクピットとしてはセンターパネルの中央に10.25インチのTFTタッチスクリーンディスプレイを配したことがトピックで、この画面を通じてインフォテインメント機能や空調、車両の一般設定などの操作を行うことが可能。また、ドライバー前には多様な情報を見やすく表示する10.25インチTFTドライバーディスプレイを装備する。センターコンソールには、ガラス製のスタート/ストップボタンや金属製のドライブモード切り替え用ロータリーダイヤルを設定した。一方でシートについては、独自のキルトとパーフォレーションパターンを施し、かつサテンまたはグロス仕上げの2×2ツイルカーボンファイバーで仕立てた16方向調整スポーツプラスシート(ヒーター機構付き)を装着。1170W/15スピーカーで構成する専用セッティングのBowers&Wilkinsオーディオシステムも装備した。さらに、シート後方のキャビン部には彫刻を施したリアクロスブレースを配し、サドルレザーのラゲッジセットも用意して、有効な収納スペースに当てている。
▲センターパネルの中央に10.25インチのTFTタッチスクリーンディスプレイを、ドライバー前に10.25インチのTFTドライバーディスプレイを採用。写真はセージグリーンインテリアで、サテンダーククロームパネル/アルジェントトリムインレイを配備
パワートレインについては、クーペと共通の進化版5.2リットルV型12気筒DOHC48Vツインターボエンジンをフロントミッドに搭載。最高出力は835ps/6500rpm、最大トルクは1000Nm/2500~5000rpmを発生する。組み合わせるトランスミッションは、専用セッティングのZF製8速オートマチックギアボックスをリアミッドに配備。リアドライブの駆動系には、改良版のカーボンファイバー製プロペラシャフト付アロイトルクチューブのほか、フルオープンから100%ロックまで135ミリ秒の速さで移行する電子制御リアディファレンシャル(e-diff)を組み込み、低中速域のコーナリングでの敏捷性を高めると同時に、オーバーステア時や高速域でのレーン変更時のコントロール性を向上させる。性能面では、最高速度がクーペと同じ345km/h、0→100km/h加速がクーペ比で0.1秒落ちの3.4秒を実現した。
▲パワートレインにはクーペと共通の進化版5.2リットルV型12気筒DOHC48Vツインターボエンジンをフロントミッドに搭載。最高出力は835ps/6500rpm、最大トルクは1000Nm/2500~5000rpmを発生する
接着アルミシャシーに関しては、クーペと同様に前ダブルウィッシュボーン式/後マルチリンク式で構成したサスペンションとビルシュタインDTXダンパーを採用したうえで、オープンボディ化による重量増および前後重量配分の変化に伴う専用セッティングを実施。シューズには前9.5J/後11.5J×21鍛造アロイホイールと前275/35/後325/30ZR21サイズのピレリP Zero(PZ4)タイヤを装着する。また、制動機構には前Φ410mmディスク+6ピストンキャリパー/後Φ360mmディスク+4ピストンキャリパーのカーボンセラミックブレーキを標準で組み込んだ。
▲クーペと同様に前ダブルウィッシュボーン式/後マルチリンク式で構成したサスペンションとビルシュタインDTXダンパーを採用したうえで、オープンボディ化による重量増および前後重量配分の変化に伴う専用セッティングを実施
なお、ヴァンキッシュ ヴォランテの注文は現在受付中。生産はクーペのヴァンキッシュと合わせて年間1000台以下の限定で、デリバリーは本年第3四半期に開始する予定である。