ダイハツ・タント・カスタムRS(FF) 試乗記
ダイハツ・タント・カスタムRS(FF) 価格:CVT 174万9600円 新型4thモデルは新世代DNGAプラットホーム採用 ボディ曲げ剛性を旧型比30%向上させると同時に約40kg軽量化 内外装すべての見直しで幅広い年齢層のユーザーニーズに対応する
パッケージ上の美点を踏襲。新型は運転席ロングスライド装備
タントはダイハツの主力Kカーである。スーパーハイトワゴンという新ジャンルを創造。センターピラーレス構造の大開口ボディなど革新的なパッケージングで、ファミリー層を中心に安定した支持を集めてきた。
最近は強力なライバルが登場し、以前のような独走状態ではなくなりつつある。だからこそ、今回のモデルチェンジでどのように変身するのか気になっていた。
2019年7月9日に発表された新型4thモデルは、助手席側センターピラーレスのスライドドアをはじめとするパッケージング上の美点は旧型を踏襲。スタイリングについては方向性が変わった。
バリエーションは標準とカスタムの2シリーズ構成。標準型タントのフロントマスクは上下に薄くなり、ラウンディッシュな角型をアクセントとする手法で、柔らかい雰囲気に仕上がっている。上下に厚いノーズと薄い顔の組み合わせながら、間延びした印象はない。完成度の高い造形である。
カスタムも変わった。旧型比でクロームメッキの使用が抑えられ、黒を多用した精悍なフロントマスクになった。従来のギラギラした顔つきは、ボク自身は「勘弁してほしい」という気持ちだったが、新型は受け入れられる。
室内は圧倒的に広い。室内長×幅×高は2180× 1350×1370mm。前後方向も高さ方向も、まさに「ミニバン」と呼ぶにふさわしい余裕がある。乗降性や使い勝手も良好。新型の特徴は、運転席の前後スライド量を拡大し、運転席と後席間の移動や助手席側からの乗り降りを可能にした点である。
スライド解除ボタンを押してから、座面下あるいは背もたれ背後のレバーを引くと、運転席は最大540mmも前後方向に動かせる。後方にセットした状態では運転はできないので、誤動作防止のために解除ボタンを設定したという。
もっとも、この状態でも後席へのウオークスルーは難しい。380mmスライドできる助手席を最前に設定し、背もたれを前方に倒しておく必要がある。ホンダN-VAN(商用車)のように、助手席がコンパクトに格納できれば利便性はさらに増すだろう。
新型は旧型と同様に助手席側センターピラーレスのミラクルオープンドアを採用 助手席側の大開口スペースが生み出す利便性は圧倒的
素晴らしい居住性。シートアレンジは使いやすい
従来インパネ中央にあったメーターは、運転席側に拡大された。運転席の前に表示されるのは運転支援システム関連の情報だけで、周辺は空白部分が多い。横長なので、左右方向の視線移動が大きい点が気になった。
各部の仕上げはいい。インパネやドアトリムにはダイヤモンド柄のトリムを採用。シートカラーは標準車がグレー、カスタムはブラック基調。標準車のファブリックは爽やかな雰囲気だった。
後席の居心地は素晴らしくいい。シート位置を最後方にセットすると、身長170cmのパッセンジャーでも楽に足が組める。折りたたみ方法はイージーになった。従来、背もたれを前に倒した後に全体を前方の足元空間に落とし込んでいたが、新型は背もたれを倒すと同時に座面が沈み込む。ワンタッチでフラットに近いフロアになる。
新型タントは、ダイハツがDNGAと呼ぶ新世代プラットホームの導入第1号である。高剛性と軽量化を高次元で達成できたという。
カスタムは前後大型バンパーと専用ボディパーツでスポーティイメージを強調 ボディカラーは単色8種 ルーフがブラックになる2トーン仕上げ(op7万5600円)が3種 合計11タイプ
坂道もぐんぐん走る! フットワークは優秀
エンジンは燃焼効率向上などを実現した658cc直列3気筒の自然吸気(52ps/60Nm)とターボ(64ps/100Nm)。自然吸気のタントXとターボのカスタムRSに乗った。加速性能は自然吸気でも不満がなかった。ベルト+ギア駆動を実現した新方式CVTと、静粛性がアップした点が好印象の要因だろう。ターボになるとパフォーマンスは余裕たっぷり。坂道もぐんぐん走る。
ボクが便利だと思ったのは、ステアリング右スポークに配置されたパワーボタンだ。押せばエンジン回転が上がりぎみになり、もう一度押すと元に戻る。力強さやエンジンブレーキが必要なシーンで、右手親指で瞬時に操作できる。
新開発プラットホームによる乗り心地は、路面段差や継ぎ目では直接的なショックを伝えるものの、それ以外はしっとりした感触が味わえた。ターボのカスタムRSは標準車のXより固めの設定だが、基本的な性格は共通していた。
フットワークは優秀。ロールを適度に抑えつつ、足回りが自然な動きを示すので、安心してコーナーに入れる。高速道路での直進性も安定していた。
旧型タントの登場時に、「これ以上の発展は望めないのではないか」と感じたが、新型はプラットホームの一新をはじめ、明らかに完成度が高まっていた。「よりよいタントにしていこう」という開発者の明確な意思を感じた。
インパネは小物収納スペースが多数ある機能的な造形 新型は各部にダイヤモンド柄のトリムを採用 写真のディーラーopナビは9インチ(22万1616円)
カスタムRSのシートは合成レザーとファブリックのコンビ仕様 後席は左右独立スライドとリクライニング機構付き 室内長2180mm
運転席は最大540㎜のロングスライド機構付き 助手席側から乗り込める設計
主要安全・運転支援システム一覧(ライバル車比較)※クリックすると拡大します
※次ページでスペックを紹介
ダイハツ・タント・カスタムRS(FF)主要諸元と主要装備
グレード=カスタムRS(FF)
価格=CVT 174万9600円
全長×全幅×全高=3395×1475×1755mm
ホイールベース=2460mm
トレッド=フロント1300×リア1295mm
最低地上高=150mm
車重=920kg
エンジン=658cc直3DOHC12Vターボ(レギュラー仕様)
最高出力=47kW(64ps)/6400rpm
最大トルク=100Nm(10.2kgm)/3600rpm
WLTCモード燃費=20.0km/リッター(燃料タンク容量30リッター)
(市街地/郊外/高速道路=17.5/21.4/20.4km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=165/55R15+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径= 4.7m
●主な燃費改善対策:自動無段変速機/ロックアップ機構付きトルクコンバーター/可変バルブタイミング/オルタネーター回生制御/アイドリングストップ
●主要装備:スマートアシスト(衝突回避支援ブレーキ+衝突警報機能+車線逸脱警報+車線逸脱抑制制御+前後誤発進抑制機能+先行車発進お知らせ+アダプティブドライビングビーム+前後コーナーセンサー+標識認識機能)/SRSサイド&カーテンエアバッグ/ミラクルオープンドア/大型エアロバンパー/サイドストーンガード/フルLEDヘッドライト/LEDデイライト/両側パワースライドドア/スライドドアイージークローザー/タッチ式ドアリクエストスイッチ/ファブリック×ソフトレザー調シート/運転席ロングスライド機構/助手席ロングスライド&フラット機構/後席スライド&リクライニング機構/本革巻きステアリング/TFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ/16cmフロントスピーカー/フルオートAC
●装着メーカーop:コンフォータブルパック(360度スーパーUV&IRカットガラス+格納式シートバックテーブル+運転席シートリフター+チルトステアリング+シートヒーター+リアヒーターダクト)3万7800円/スマートクルーズパック(全車速追従アダプティブクルーズコントロール+レーンキープコントロール+専用ディスプレイほか)5万4000円/スマートパノラマパーキングパック(スマートパノラマパーキングアシスト+16cmリアスピーカーほか)7万200円
●ボディカラー:ブラックマイカメタリック×シャイニングホワイトパール(op7万5600円)
※価格はすべて消費税(8%)込み リサイクル費用は7440円
※スペックは2019年8月現在
新型は後席背もたれを倒すとクッションが自動的に沈み込む設計 簡単な操作でほぼフラットな大空間になる
タントX(FF) 価格:CVT 146万3400円 標準仕様はラウンディッシュな薄型LEDヘッドランプ採用 Xのパワーユニットは自然吸気仕様(52ps/60Nm) WLTCモード燃費は21.2km/リッター