日産が上海モーターショー2025においてプラグインハイブリッドの新型ピックアップトラック「Frontier Pro」を初公開。パワートレインには1.5Lターボチャージャー付き4気筒ガソリンエンジンと、トランスミッション内に搭載する高出力電動モーターを組み合わせた新開発のプラグインハイブリッドシステムを採用。合わせて中国市場で発売する新世代EVセダン「N7」の市販モデルを披露
日産自動車は2025年4月23日に開幕した上海モーターショー2025において、同社初となるプラグインハイブリッドの新型ピックアップトラック「Frontier Pro(フロンティア プロ)」を初披露。さらに、中国市場で発売する新世代EVセダン「N7」の市販モデルをひな壇に上げた。
まずは新型ピックアップトラック「Frontier Pro」から紹介していこう。同車は数十年に及ぶ日産のピックアップトラックの伝統および知見と、世界有数の新エネルギー車(NEV)市場である中国の最新電動パワートレイン技術を高次元で融合したことがトピック。開発に際しては鄭州日産(ZNA)と共同で実施し、市街地における日常的なドライブでの快適性や効率の良さに加えて、週末の郊外で楽しむアウトドアアクティビティにも対応できる、多面性を求めるファミリー層をターゲットに据えた5名乗り多目的ピックアップトラックとして企画する。生産は中国で実施し、2025年末までに同市場での発売予定。将来的には輸出も計画しているという。
▲新型ピックアップトラックのFrontier Proは数十年に及ぶ日産のピックアップトラックの伝統および知見と、世界有数の新エネルギー車(NEV)市場である中国の最新電動パワートレイン技術を高次元で融合したことが特徴。開発に際しては鄭州日産(ZNA)と共同で実施する
デザインについては、“Rugged tech(逞しくかつ先進的)”をコンセプトに、モダンな外観と広々として洗練された室内空間を両立する。日産の上海デザインチームは、1980年代の日産D21型ハードボディ ピックアップのフードに開いた特徴的な3つのエアインテークをオマージュして採用するとともに、新デザインのフロントLEDライトを組み込んでフロンティアらしさを先進的に表現。シューズには新造形の18インチアルミホイールと265/65R18タイヤを全モデルに装着し、足もとの逞しさを強調した。ボディサイズは全長5520×全幅1960×全高1950mm/ホイールベース3300mmに、カーゴベッドは長1520×幅1600×高490mmに設定。車重はグロスウエイトで3315~3355kgに仕立てる。また、グランドクリアランスは231mmを確保し、さらにアプローチアングルは30度、ディパーチャーアングルは25度を実現して、オフロードの走破性を高めた。
▲フロントマスクには1980年代の日産D21型ハードボディ ピックアップのフードに開いた特徴的な3つのエアインテークをオマージュして採用するとともに、新デザインのフロントLEDライトを組み込んでフロンティアらしさを先進的に表現
内包するインテリアは、室内空間の広さに加えて標準装備のパノラマルーフ、10インチLCDインストルメントパネル、14.6インチインフォテインメントスクリーンなど、充実した機能装備を採用。また、フロントシートにはヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能を、後席には60:40分割可倒機構を配備して、快適性および利便性を高める。さらに、プラグインハイブリッドバッテリーを活用したV2Lポートを組み込んで、家電機器などを最大6kWで使用することを可能とした。
注目のパワートレインは、1.5リットル直列4気筒DOHCガソリンターボエンジンと、トランスミッション内に配備する高出力電動モーター、そしてリチウムイオン電池を組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを新開発して搭載。システム全体で300kW以上の最高出力と800Nmの最大トルクを発揮し、高いパフォーマンスと優れたエネルギー効率を実現した。また、中国市場向けではEV走行時の最大航続距離135km以上の実現を目指している。
▲パワートレインには1.5リットル直列4気筒DOHCガソリンターボエンジンと、トランスミッション内に配備する高出力電動モーター、そしてリチウムイオン電池を組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを新開発して搭載。システム全体で300kW以上の最高出力と800Nmの最大トルクを発生する
シャシーおよび駆動機構に関しては、高いオフロード性能を実現する目的で、前ダブルウィッシュボーン式/後5リンク式のサスペンションと、前後輪のトルク配分を自動で制御するIntelligent All-Wheel Driveを採用するとともに、電動メカニカルリアデフロックを配備。また、ドライブモードとして走行シーンや好みに合わせて選択できる「ハイブリッド」「ピュア エレクトリック」「パフォーマンス」「スノー」の4種類を設定した。
従来の開発期間を大幅に短縮して開発し、4月27日に中国市場で発売した東風日産乗用車公司の新世代EVセダン「N7」の概要に話を移そう。デザイン面ではエレガントなプロポーションと広々とした室内空間を兼ね備えたファストバックスタイルを採用して、流麗かつ上質感あふれるスタイリングを創出する。各部のデザインにもこだわり、フロントには710個の高出力LEDランプとともに、日産ならではのV-Motionデザインシグネチャーを配備して精悍で先進性あふれるマスクを創出。一方でサイドビューは、フレームレスドアやフラッシュドアハンドルによりクリーンでモダンな佇まいを演出する。足もとには新造形の19インチアルミホイールを装備した。そしてリアセクションは、安定感のある台形のフォルムに882個のOLEDを配した一直線に広がるコンビネーションランプを組み込んで、斬新かつ印象的な後ろ姿を具現化する。自然からインスピレーションを得た6種類のエクステリアカラーと、2種類のスタイリッシュな内装オプションを設定したことも、N7の訴求点である。ボディサイズは全長4930×全幅1895×全高1487mm/ホイールベース2915mmに仕立てた。
インテリアについては、先進技術を活用してファミリー層向けに心地良い環境を提供したことがトピックだ。フロントシートには49個の独立したセンサーからの入力に基づき、AIを駆使してシートを調整する姿勢適応システムを備えた「ゼロプレッシャーシート」を装着。また、前2席に12ポイントのマッサージ機能を、運転席に最大60mm拡張するエアクッション機構を組み込んで乗車時の快適性を高めた。コクピットに関しては、2.5Kの卓越した解像度(2560×1440ピクセル)でコンテンツを映し出す15.6インチセンターインフォテインメントスクリーンを配備したことがアピールポイント。Qualcomm Snapdragon 8295Pプロセッサーを搭載し、シームレスなエンタテインメントとコネクティビティ体験、そしてDeepSeek-R1 AI Integrationを提供する。32GBのメモリと256GBのデータ容量により、高速で応答性が高い状態での使用を可能としたことも、新システムの特徴である。
パワートレインに関しては、フロントに最高出力160kW/最大トルク305Nmを発生するモーターと総電力量58kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載した仕様と、最高出力200kW/最大トルク305Nmを発生するモーターと総電力量73kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載した仕様を設定。一充電航続距離は中国CLTCモードで58kWh仕様が510km以上、73kWh仕様が最大635kmを実現した。充電については、急速充電で10%から80%までを約19分、30%から80%までを約14分で完了するという。
▲パワートレインはフロントに最高出力160kW/最大トルク305Nmを発生するモーターと総電力量58kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載した仕様と、最高出力200kW/最大トルク305Nmを発生するモーターと総電力量73kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載した仕様を設定
シャシー面については、前マクファーソンストラット式/後マルチリンク式サスペンションを配するとともに、車酔いを和らげる機能を組み込んで乗員全員に快適な乗り心地を提供する。また、中国における自動運転技術のリーダーであるMomenta(モメンタ)と提携し、「Navigate on Autopilot(ナビゲートオンオートパイロット)」と称する、地点から地点への移動が可能な高度な運転支援システムを新採用。同システムは、高速道路では合流や追い越しなどの複雑な操作をシームレスに処理し、市街地では車線変更や複雑な曲がり角の状況、他の車両が不意に車線に合流した場合などでもスムーズに対処。さらに、自動駐車機能により斜めのスペースや狭いスペースなど難しい状況での駐車にも対応している。
なお、N7の車両価格はエントリーモデルの510 Airで11万9900元(約235万円)、最上位グレードの625 Maxで14万9900元(約294万円)と、非常にリーズナブルなプライスタグに設定。その効果もあって、N7は前述の通り4月27日に中国市場で発売したが、翌28日までには1万台以上の受注を獲得したという。