静粛性と走破性が好バランス、ジオランダーX-CV
▲アグレッシブなデザインではなく性能重視タイプの非対称デザインで仕上げているため走りや乗り心地がハイバランス 欧州ラベリングの転がり抵抗とウエットグリップはE‐b(日本のB‐bに相当)をクリア ウエットの実力は高く雨の日の安全性もハイレベル
横浜ゴムのジオランダー・ブランドはクロスカントリー4×4用のマッドテレーンからハイウェイテレーンまで豊富なラインナップを用意してきたが、輸入SUVのハイインチを選ぼうとすると、ジオランダーSUVかアドバン・スポーツ、またはミニバン用ブルーアースRV‐02、あるいはインチアップ用として開発されたパラダがあった。
つまり従来は、どのタイヤを選ぶべきかが明確ではなかったが、新型ジオランダーX‐CVは、このあたりのニーズを一気に引き受ける、わかりやすいポジションのニューモデルになる。今回リリースされたのは18~21インチの全11サイズ。ターゲットは街乗りや高速道路でロングドライブする一般的な輸入SUVユーザー。スポーティな走りを好む場合はアドバン・スポーツ、乗り心地や静粛性を重視するならジオランダーX‐CV、という分類だ。
コンフォート指向であっても安全が二の次では嫌だ、というユーザーの声が多いため、新型は重点的に向上を図った。メーカーテストによれば従来品に相当するパラダ対比で、ウエット、スノー、静粛性を引き上げている。スピードレンジは一般的な輸入SUVの純正タイヤに合わせてV(240㎞/hまで)からW(270㎞/hまで)に変更した。
性能チャートを見る限り、普通に乗るには大変よさそうなバランス指向に思える。さっそく試乗してみよう。
試乗車はジープ・グランドチェロキーとメルセデスGLE。グランドチェロキーが265/50R20、GLEが265/45/R20というファットサイズだ。まずグランドチェロキーで走りだす。
ジオランダーX‐CVは静かなタイヤという第一印象を得た。サイプを多く刻んであり、前後のブロック剛性を高めていない点や、接地面内部のナイロン製フルカバーが効果を発揮しているのだろう。ロードノイズやパターンノイズが聞こえてこない。オフロードを意識したクロカンタイヤとは大きく異なる、洗練されたイメージのタイヤだ。
乗り心地と走りのバランスもいい。ワインディングで落ち着いて走るには適度な剛性を感じる。キビキビ走りたいならアドバン・スポーツを推奨するが、ジオランダーX‐CVでも車重を意識させない。しっかりした剛性の持ち主といえる。
メルセデスGLEでは表面が荒れたアスファルトを走ったが、ザラつきを伝えてこないスムーズなフィールが好印象だった。GLEとのマッチングも上々で、プレミアムなSUVらしく走れるタイヤだ。
▲メルセデスGLEに265/40R20のジオランダーX‐CVを装着 ワインディングでもタイヤの変形を感じずスムーズに走れる剛性がある 乗り心地や静粛性とのバランスも優秀 デメリットが見当たらないまとめ方が魅力的
北海道のテストコースでは雪上走行を試す機会があった。M+S規格をクリアしているので、ある程度の雪上グリップを持つことは予想できたが、実際に走ると期待を超えるグリップが感じ取れる。ブレーキングでもパイロンスラロームでも、けっして軽くないグランドチェロキーとの組み合わせで、スイスイ走れる実力は意外なほどだった。
▲グランドチェロキーで圧雪路を試乗 ロールするほどグリップを感じながらパイロンスラロームをこなす 溝がある新品時ならコーナリングでもブレーキングでもグリップは高く滑ったときの粘りもあって安心感は高い
数多く刻んだサイプは2次元や3次元立体化を採用して荷重時の剛性を向上。コンパウンドは新混合のポリマー搭載など、最新テクノロジーを惜しみなく投入して作り上げたニューモデルだ。ぜひ国産SUVにマッチするサイズも出してほしい。