ホンダアクセス・シビック・タイプR純正「テールゲートスポイラー」
航空機由来の「魔法のシェブロン」採用。確かに違う走り味
ホンダアクセスから、シビック・タイプR用アイテムが全国のディーラーを通じてリリースされた。発売日は車両と同タイミング。スピード感あふれる商品投入を可能にしたのは、タイプRの設計陣と綿密なやり取りを行いながら企画/開発を進めてきたからだ。
リアルカーボンを用いたインテリアパネルやイルミネーション付きサイドステップガーニッシュ、「TYPE R」のロゴ入りマットなどが用意される中で、このモデルならではの走りのアイテムとして目を引くのが、標準のアルミダイキャスト製ステーを生かし、ウイング本体部分を交換して取り付けるテールゲートスポイラー(27万5000円)だ。
ホンダアクセスが手掛けるエアロパーツ類は、どれもが日常の速度域から効果が体感できる「実効空力」を意識して開発されている。このテールゲートスポイラーもそうしたコンセプトに基づく製品。両サイドに翼端板を設けたデザインはいわゆる「GTウイング」を意識したとも思える仕上がりだ。
開発は、空力効果とスタイリングのバランスを取りながら進行。赤いポリエステルファイバーを織り込んだ翼の後端部分に立ち上がるガーニーフラップは、開発当初は全幅に及んでいたものを市販版は中央部分のみに限定。これは外側部分のダウンフォースを意図的に抑えるための工夫だ。コーナーターンイン時の挙動を滑らかにする効果があるという。さらに翼端板もAピラーが跳ね上げる空気の流れやサイドを流れる乱流を遠ざけるよう検討。そのうえで、エッジ感を演出し薄く見えるように仕上げている。
興味深いのは、開発陣が「シェブロン」と名付けたメインエレメント裏側の鋸歯形状。車体後部の空気の乱れを抑え、時速140kmで約1kgのダウンフォースを増す効果を発揮する。それだけではない。コーナー進入時にはシェブロンが空気の流れを整流、扱いやすいハンドリングを実現するという。
標準のリアスポイラーがサーキット走行時のタイムアップを主眼に据えているのに対し、純正オプションのアクセス製品は、「運転が上手くなったように感じさせる寛容性を生み出す」ことが目的。同じウイングでも開発思想は明確に異なる。
そんなシェブロン効果を実感するために、開発陣はマグネット製のシェブロンを試作してくれた。実際にNボックスのゲートスポイラー上部に張り付けて走行すると、時速60kmに到達する前から「乗り心地がマイルドになった」ように感じられた。当初「気のせいかな?」と思えたものの取り外すと元に戻る。これは「効いている」と認めざるを得ない。さらに、シビック・タイプRでウイング交換を行って走り始めた際にも、2速ギアへとシフトアップした段階で感じられたのは、やはり同様の印象。同一の車両であっただけに、やはり「気のせい」ではない。
鈴鹿サーキットのフルコースとは路面もレイアウトもまったく異なる群馬のサイクルスポーツセンターというロケーションを、フルウエットのコンディションで乗った新型シビック・タイプRは、素晴らしい走りを披露してくれた。同時にホンダアクセス製スポイラーが確かに“運転が上手くなったように感じさせてくれた”ことは、大きな発見だった。
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