ヤマハのパフォーマンスダンパーは、2001年にトヨタ・クラウンアスリートVXに初搭載。以後、2011年レクサスCT200hで採用など、レクサスFスポーツやトヨタTRDに純正採用されており、2020年には生産実績は200万本を達成。アフターマーケットでもファンが多いボディパーツだ。
サスペンションではなくボディにダンパーを?という基本的な疑問がわく人が少なくないかもしれない。ヤマハは1980年代に得意とする高性能エンジンを受け止めるシャシー技術の開発をスタート。相互連携アブソーバシステム=REASやX-REASを生み出し、トヨタ・スープラやハイラックスサーフに標準採用された。
しかしサスペンションダンパーだけでのシャシー技術の高性能化に限界を感じ、車体剛性に関する研究に着手。ボディ剛性をどんどん高めていったが、思うような進歩が得られなかった。テストドライバーのイメージから、必要なのは剛性ではなく粘性ではないか、という仮説を立て、実験したところ予想以上の効果が得られ、誕生したのがパフォーマンスダンパーだ。
走行中のクルマが路面のうねりや凹凸を通過すると、通常はサスペンションで受け止めている、と考えられる。それは間違いではないが、サスペンションだけでなく、ボディもわずかに変形しながら入力を受け止める。ボディは金属製なので変形は振動に変わり、固有振動数で振動を続ける。これを減衰させるのがパフォーマンスダンパーなのだ。
ボディの振動が抑えられるため、走りがスムーズになり、リニアリティがアップする。装着車と非装着車を乗り比べると、ボディ振動が悪さをしている部分がよくわかる。たとえば路面の荒れや凹凸は左右輪で異なるタイミングで入力される。ボディは絶えず斜めに変形し、振動を繰り返すわけで、これは乗り心地の悪化につながるし、走りもすっきりしない。パフォーマンスダンパー装着車は、この振動が抑えられ、乗り心地と走りがすっきり上質になる。ステアリングを操作したときのボディ変形も瞬時に収めるので、コーナリングも余計な揺り戻しがなく、リニアでスムーズになる。
パフォーマンスダンパーは、走りだけでなくノイズ低減にも効果的。楽器のシンバルを思い浮かべればわかるように、金属製のボディは振動して音を出す。振動が続く限り音出し続ける。これが、荒れた路面を通過したときに発生するロードノイズだ。一般的にはボディに内装材を貼り付け振動を抑えるのだが、オイルを使ったパフォーマンスダンパーは、より効果的に粘性を発揮し、振動を瞬時に収める。だからロードノイズも静かになる。ドアを閉めたときの音まで重厚感ある音質に変化する。新車でも効果は絶大なので、ボディのやれや劣化が気になる場合は、ぜひ試してみるといいだろう。